5 / 10
第5話
勃起しなかったのは、触手に犯されたショックのせいで、次の日には戻るだろうとフィオレオもガットも思っていた。
しかし、あれから一週間。一度も勃っていない。
「あの…今日こそ、指でしましょうか?」
「は?お前の指は結腸まで届くのか?それとも、手首でも入れてくれんのか?」
「…っ、そんな長くないし、フィストの趣味はないです」
この一週間、ガットは生煮えの状態で夜を過ごしていた。そのため、普段それほど機嫌を悪くするタイプではないのに、さすがに欲求不満であからさまに苛立っていた。フィオレオもなんとなく申し訳なさを感じ、強く言い返せない。
「全然反応しねぇじゃねぇか。あれか?もう尿道責めしねぇと勃たねぇのか?」
「止めて下さいよ!?」
萎えたままの陰茎の先端をグリグリと強めに刺激され、ギョッとフィオレオは目を剥いた。
しかし、このままだとガットが欲求不満で機嫌が悪いだけでなく、今後ガットが怪我をした時に回復させられない。この一週間、たまたま危険な指令が入らなかっただけで、いつ怪我を伴う仕事になるか分からない。
役立たずが、さらに役立たずだ。
仕事の量や難易度は、パーティーの全体レベルにより決まっている。ガットのレベルが高いとはいえ、フィオレオのレベルがすこぶる低いため、パーティーとしては中の下のレベルだ。そのため、お金もあまり高くなく、良い回復薬は数多く買えない。
フィオレオは危機を感じていた。
そして、『回復するため』『気持ちいいため』と体だけでも繋げられていた関係が、このままではなくなってしまうのではないか。
もっと使い勝手の良い、レベルの高い魔法使いやセックスのうまい男など沢山いる。
抱けない自分は、魔法使いとしても、男としても、ガットにとって用済みなのではないか。
『これじゃあ、役に立たないな』
フィオレオの脳裏に、昔言われた言葉が蘇る。能力はあるのにうまくレベルが上がらず、周囲から見下されていた。そして、18歳の成人の日。パーティーを組むためのお披露目会で、勇者の一人から言われたのだ。いや、一人だけじゃない。沢山の人に言われた。レベルが低すぎて、役に立たないと。
こんな弱い奴を仲間にしてくれるのは、ガットくらいだ。
そんなガットに捨てられたら、もうパーティーを誰にも組んでもらえないかもしれない。
「はぁ」
ガットの深いため息が聞こえた。ギクッとフィオレオの体が固まる。
どうしよう。呆れられている。捨てられてしまう。
それに、なによりガットの傍にいたい。
ガットは隠しているようだが、フィオレオは気づいていた。ガットが夜な夜なセックスしたがる理由を。ガットはセックスをしないとうまく眠れないようなのだ。だからきっと、たとえこのままパーティーを組み続けても、自分がガットを抱けなければ、他の男に抱かれに行ってしまう。
ちゃんとガットを守りたい。
怪我からも、不眠からも。何もかもから、ガットを守りたい。
―――けど、これじゃあ、守れない。
ともだちにシェアしよう!