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第5話

 勃起しなかったのは、触手に犯されたショックのせいで、次の日には戻るだろうとフィオレオもガットも思っていた。 しかし、あれから一週間。一度も勃っていない。 「あの…今日こそ、指でしましょうか?」 「は?お前の指は結腸まで届くのか?それとも、手首でも入れてくれんのか?」 「…っ、そんな長くないし、フィストの趣味はないです」  この一週間、ガットは生煮えの状態で夜を過ごしていた。そのため、普段それほど機嫌を悪くするタイプではないのに、さすがに欲求不満であからさまに苛立っていた。フィオレオもなんとなく申し訳なさを感じ、強く言い返せない。 「全然反応しねぇじゃねぇか。あれか?もう尿道責めしねぇと勃たねぇのか?」 「止めて下さいよ!?」 萎えたままの陰茎の先端をグリグリと強めに刺激され、ギョッとフィオレオは目を剥いた。  しかし、このままだとガットが欲求不満で機嫌が悪いだけでなく、今後ガットが怪我をした時に回復させられない。この一週間、たまたま危険な指令が入らなかっただけで、いつ怪我を伴う仕事になるか分からない。 役立たずが、さらに役立たずだ。 仕事の量や難易度は、パーティーの全体レベルにより決まっている。ガットのレベルが高いとはいえ、フィオレオのレベルがすこぶる低いため、パーティーとしては中の下のレベルだ。そのため、お金もあまり高くなく、良い回復薬は数多く買えない。 フィオレオは危機を感じていた。 そして、『回復するため』『気持ちいいため』と体だけでも繋げられていた関係が、このままではなくなってしまうのではないか。 もっと使い勝手の良い、レベルの高い魔法使いやセックスのうまい男など沢山いる。 抱けない自分は、魔法使いとしても、男としても、ガットにとって用済みなのではないか。 『これじゃあ、役に立たないな』 フィオレオの脳裏に、昔言われた言葉が蘇る。能力はあるのにうまくレベルが上がらず、周囲から見下されていた。そして、18歳の成人の日。パーティーを組むためのお披露目会で、勇者の一人から言われたのだ。いや、一人だけじゃない。沢山の人に言われた。レベルが低すぎて、役に立たないと。  こんな弱い奴を仲間にしてくれるのは、ガットくらいだ。 そんなガットに捨てられたら、もうパーティーを誰にも組んでもらえないかもしれない。 「はぁ」 ガットの深いため息が聞こえた。ギクッとフィオレオの体が固まる。 どうしよう。呆れられている。捨てられてしまう。 それに、なによりガットの傍にいたい。 ガットは隠しているようだが、フィオレオは気づいていた。ガットが夜な夜なセックスしたがる理由を。ガットはセックスをしないとうまく眠れないようなのだ。だからきっと、たとえこのままパーティーを組み続けても、自分がガットを抱けなければ、他の男に抱かれに行ってしまう。 ちゃんとガットを守りたい。 怪我からも、不眠からも。何もかもから、ガットを守りたい。 ―――けど、これじゃあ、守れない。

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