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第7話

「これで当分、お金に困りません。良い回復薬が買えます」 「…は?そんなことしろって誰が言ったよ」 困惑しつつもガットの瞳が鋭くなり、声音に険が垣間見えた。 「僕が勝手にしたかったんです…」 「っ!!何を血迷ったがしらねぇけど、自分が何やってんのか分かってんのか?!ただでさえレベル低いのに、元々ある潜在能力まで低くしてどうすんだよ!死にてぇのか!?」 ガットの勢いのある怒号に、ビクッと体が硬直する。さすがに、怖い。しかし、どこか冷静な頭の隅で、この1週間、ガットの普段見せない姿を沢山見た気がするとフィオレオは思った。 そして、残った左目でガットを捉え、はっきりとした口調で告げた。 「だって…貴方を抱けない僕じゃあ、貴方の傍にいる意味がない。怪我をした時に治せない。それに、回復薬だって安いやつじゃ、全然治らない。良い薬を買うにもお金がいるけど、レベルの低い僕がいたらどうしたってパーティー全体のレベルが低くて、報酬のいい仕事は来ません」 未だかつてなく真剣なフィオレオの口調と態度に、ガットも冷静になって話を聞いている。 「…他にもやり方はあるだろ」 「レベルが高い他の職種を探すにも時間がかかります…。僕が貴方のパーティーを抜けて、新しいレベルの高い魔法使いを入れるのが一番良いことも分かっています。けど…それだけは嫌なんです…。僕は…貴方の傍にいたい」 声に涙が滲む。 もっと冷静に言おうと思っていたのに。 何度も今日、頭の中でシュミレーションして、落ち着いて伝えられるはずだったのに。 どうしても、声が震えてしまう。 気持ちが溢れてしまう。 「ガット…。僕がっ、貴方を守りたいっっ。魔法使いとして…、けどそれだけじゃないっ。男としても…っ。貴方が他の誰かに抱かれたり、貴方の隣に他の人がいたりするのは嫌だっっ!!」 思わずガットの両腕を握りしめた。 「いっ」 フィオレオの手は震えながらも、きつくきつく、まるで縋るように腕を掴み、ガットは痛みに眉を寄せた。 「―――貴方の傍に居られるなら、僕は何だってします」

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