8 / 10

第8話

自分勝手な執着と我が儘だ。 ガットの顔を見ていられずに、顔を隠すようにフィオレオはぎゅっとガットを抱きしめた。しかし、ガットがそれを突っぱねた。 「…そんなやり方で守って欲しいとは思ってねぇよ。第一、守られたいなんて思ってねぇ。迷惑だ」 容赦のない怒りに満ちた言葉に、フィオレオは瞳を伏せる。 自分にとってガットは唯一無二の存在だが、ガットにとっての自分もそうだとは限らない。むしろ、元々役立たずの自分が、そんな存在になれているはずがなかったのだと、現実をつきつけられてフィオレオは唇を噛みしめた。 「…すみません…。そうですよね…」 ガットの為と言いつつ、行ったことは全部、自分のためだ。 自分の我が儘を全部押しつけて、それで守りたいなんて、甚だ可笑しい。こんなことがしたいわけじゃない。ガットを怒らせたいわけじゃないのに。 ガットをちゃんと守りたいならば、もう、自分には離れる以外の選択肢はないのかもしれない。 長い沈黙の果て、フィオレオは瞳を開いた。 「ガット…ごめんなさい。貴方を怒らせたいんじゃない。だから…やっぱり新しい魔法使いをちゃんと仲間にして下さい」 シュミレーションにはなかった言葉なのに、先程の言葉よりも落ち着いて言えた。 フィオレオの声は震えていなかった。 冷静にガットの顔が見られる。 ガットの方がよっぽど動揺した様子で、瞳が揺れていた。

ともだちにシェアしよう!