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第8話
自分勝手な執着と我が儘だ。
ガットの顔を見ていられずに、顔を隠すようにフィオレオはぎゅっとガットを抱きしめた。しかし、ガットがそれを突っぱねた。
「…そんなやり方で守って欲しいとは思ってねぇよ。第一、守られたいなんて思ってねぇ。迷惑だ」
容赦のない怒りに満ちた言葉に、フィオレオは瞳を伏せる。
自分にとってガットは唯一無二の存在だが、ガットにとっての自分もそうだとは限らない。むしろ、元々役立たずの自分が、そんな存在になれているはずがなかったのだと、現実をつきつけられてフィオレオは唇を噛みしめた。
「…すみません…。そうですよね…」
ガットの為と言いつつ、行ったことは全部、自分のためだ。
自分の我が儘を全部押しつけて、それで守りたいなんて、甚だ可笑しい。こんなことがしたいわけじゃない。ガットを怒らせたいわけじゃないのに。
ガットをちゃんと守りたいならば、もう、自分には離れる以外の選択肢はないのかもしれない。
長い沈黙の果て、フィオレオは瞳を開いた。
「ガット…ごめんなさい。貴方を怒らせたいんじゃない。だから…やっぱり新しい魔法使いをちゃんと仲間にして下さい」
シュミレーションにはなかった言葉なのに、先程の言葉よりも落ち着いて言えた。
フィオレオの声は震えていなかった。
冷静にガットの顔が見られる。
ガットの方がよっぽど動揺した様子で、瞳が揺れていた。
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