9 / 10

第9話

「今日で、パーティーの解除をして下さ、」 「ふざけんな!!」 言い終わる前にガットが胸ぐらを掴んで、フィオレオを壁に押しつけた。ドンと凄い音がした後に、天井から垂れ下がったランプがゆらゆらと揺れる。 「ふざけんなよ…フィオ。お前が俺を捨てるのは許さねぇ」 ガットの瞳は怒りに充ち満ちている。 自分が『ガットを捨てる』? 「フィオ、お前は俺のもんだろ?」 その瞬間、フィオレオは成人の日を思い出した。 誰一人自分をパーティーに選ぼうとしてくれなかった。それどころか、低すぎるレベルに奇異な目を向けられて、とても居たたまれなかった。 そんな中、ガットだけが違った。 『お前、レベルひっくいな。まぁ、ちょうどいいや。パーティーのレベル上げたくねぇし。お前、俺の魔法使いになるか?』 歯に衣着せぬ言い方だったが、周りのような目はなかった。 『…はい。お願いします』 それは、まるで道端の小さな花を見つけるような出会いだった。 あの日から、フィオレオは『ガットの魔法使い』になったのだ。 フィオレオの左目からポロッと涙が零れる。 ガットにとって、フィオレオは既に唯一無地の魔法使いだったのだ。 「ぼ、くが…貴方を捨てるわけないじゃないですか…。貴方の傍にいて…いいんですか…?何もできない役立たずなのに」 「初めから役立たずだって分かって入れてんだろが」 「ヴっ」 「髪は仕方ねぇ。けど、目はさっさと戻してこい。俺はお前の碧目を気に入ってんだよ」 ガットの手が離れ、フィオレオの左の瞼に優しくキスが与えられた。 「…はい」

ともだちにシェアしよう!