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灰色の糸第6話
「っ、ぁあっ」
暗い照明の中、溢れるのは体液と汗と喘ぎ。
覆いかぶさる啓介さんに下から突き上げられて脳が揺さぶられる。
密着した身体に挟まれた俺の半身が擦られ刺激を受けるたびにだらだらと溢れた先走りが肌を濡らす。
強弱をつけながらの律動は唐突に激しさを増したりして翻弄されっぱなしだ。
追い上げられるだけの俺はひたすら声をあげることしかできなかった。
頭の中全部快感に染められて、まじでいままでで一番の気持ちよさに啓介さんにしがみつく。
びりびりと電流のように全身を這いまわる刺激をもっとと貪るように腰を揺らす。
熱い吐息が額に触れ、頬に触れて、唇に触れて。
動きは激しいのに唇は甘く優しい。
「……陽」
唇の傍で落ちる囁きに快感を追う俺は舌を伸ばした。
すぐに食むように甘噛みされ、咥内に舌が這う。
どんどんと追い立てられていく。
俺の意識は絶頂にイクことだけに囚われていた。
「っ……ぁ、ん」
どんどんと頭の中が白んでいく。
痙攣していく身体は自分じゃもう制御できない。
「……啓、介……っ、ん、もっとっ……ぁ、あ」
イキそうになって、何度も「啓介」と呼んだ。
そのたびに深く体内を抉られ、息もできないくらいのキスに限界はあっという間に近づく。
啓介さんの背中に爪をたて、いつもより強烈な絶頂に叫びに近い自分の喘ぎが脳内でハウリングしてスパークした。
腹部に熱い飛沫が散る。
イッてる身体がさらに揺さぶられ、塞がれた唇から呻きが伝わってきた。
絶頂の中で繋がった場所から熱が放出されるのがわかる。
一滴たりとも残さず搾り取るように、後孔がきつく収縮するのを感じた。
*
「ね、結婚ってどんな感じだった?」
風呂に入ったのは二回目のセックスを終えてからだった。
イって余韻にひたる俺の体内に挿入されたままだった啓介さんのは吐精したのに硬度を保ったままで、
『……ごめん、まだ足りない』
指を絡み合わせて欲に濡れた苦笑を向けられた。
全身を疼かせる絶頂の残滓は少し動かれただけでもまたあっという間に達しそうなくらいで、思考が麻痺した状態で俺はただ頷く。
恐ろしいくらいの快感に溺れきっていた。
背後から責められ対面座位で突き上げられて、また正常位で抱きしめあってイって。
ベッドに沈んだ俺を横抱きで風呂に連れてってくれた啓介さんは甲斐甲斐しく身体を洗ってくれた。
いまは啓介さんにもたれかかってちょうどいい温度の湯船にゆったりつかってる。
風呂にはいるまでの間にベッドの上で他愛のない話をした。
その中には互いがゲイだといつ気づいたかっていうのもあって。
俺が一番驚いたのは啓介さんがバツイチだったってことだった。
女の子は嫌いじゃないけど性的対象にはならない俺としては一度でも女と経験あるうえに、結婚したってことに興味がいってもしかたない。
首を傾けて見上げると少し辛そうに啓介さんは目を伏せた。
「ごめん! なんか変なこと聞いちゃって!」
せっかくゆったりした雰囲気だったのに自業自得、俺のせいで気まずい空気になってしまう。
離婚してるんだからダメだったってことなんだし、そもそも今日初めてあったばっかりの俺が訊くことじゃないよな。
「……いや、大丈夫」
だけど啓介さんはそっと微笑んで俺の頬に指を滑らせた。
優しい笑みだけど辛そうな瞳の色に、自分のバカさを実感する。
なにか話題変えようって逡巡していたらため息をつくようにして啓介さんは言葉を吐きだした。
「―――とてもキラキラとした綺麗な……思い出だよ」
とても、本当に幸せだった。
啓介さんは俺の目を真っ直ぐ見て、言った。
***
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