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拘束
身体が揺さぶられているような感覚に、徐々に意識が浮上していく。
薄ぐらい照明にぼんやりと浮かぶ顔は、自分よりずっと大人の顔。
裸のリンが、アルに覆い被さり身体を揺さぶっている。
「え、あ」
身体の中が異様に熱い。ということは、リンに身体を貫かれているのだろう。
「アルって放っておいたら別のアルファの匂いをまとわりつかせて帰ってくるよね」
淡々とリンは言い、ぐい、と腰を埋める。
「はう……う、あ……」
声がかすれる。
身体の気だるさから既に相当な時間彼に抱かれているのだろうと思うけれど正直記憶がない。
静夜に送られたところまではおぼろげながら覚えているけれど、その先がまるで蜃気楼のように儚く、心もとないものだった。
なんでこうなってるんだっけ?
思い出そうとするけれど、身体の中で動くリンの楔が現実へと呼び戻す。
「うん……リ、ン……俺……なにもしてな……」
「あんな匂いをまとわりつかせて?
キスぐらい、されたんじゃないの」
言いながら、リンは乳首をつねる。
痛みにじわりと涙が浮かぶが、捏ねるようにいじり回されるとそこから甘いしびれが広がっていく。
「リン……」
僅かに霞む視界に映るリンの顔は、なぜか苦しげだった。
「ねえ、アル。
学校で何かあった?」
「あ、ふぅ……あぁ……」
意味がわからず混乱していると、リンは腰の動きを止めず言葉を続けた。
「オミが、学校から帰ってきてすぐに吐いたから。
気のせいかもしれないけれど、アルファの匂いがした気がして」
「だ、め……奥、くるからあ……」
身体を震わせながら、アルはびゅっと透明に近い精液を吐き出す。
「病院は嫌がるから、紫音に来てもらったけど、紫音は特になにも言わなくて」
「あ、あ、あ……うあぁ!」
「声止まらないね、アル。
今日は俺、君に優しくできないかも」
なんで。
という疑問は、快楽の波に飲み込まれてしまう。
すがりたいのに手が動かせないことに気がつく。頭の上で手に手錠をかけられ、そこから延びた鎖は何かにくくりつけられているらしく、手は動かすことができなかった。
「俺、誰か抱くときは大抵縛るんだよね。
その怯える目……そそられる」
泣くまでいかせないというのは聞いた気がしなくもないけれど、縛るのは初めて知ったと思う。
リンの動きが止まり、中に出されたことを知る。リンはずるりと自身を引き抜くと、枕元に手を伸ばした。
スマートフォンを手にし、何かを確認しているようだった。
「オミが呼んでるから、行ってくるよ」
そして彼はがさごそと音をたてる。
服を着た彼は、手に何やら持っていた。
男性器を型どった性具だと気がつき、アルは首を横に振る。
彼はにこりと笑い、
「大丈夫だよ、アル。そんなに大きくないし。
ちゃんと動くから、寂しくはないんじゃないかな」
まるでいいことのように言い、リンはその玩具をぐい、とアルの中につきいれた。
入りきった瞬間、中でブルブルと震え出す。
「は、あ……あ……」
リンの言う通り玩具はさほど大きいものではないようだが、気持ちいいところを掠めるばかりでとてももどかしい。
すぐに戻るから、と言い額にキスして彼は離れていった。
ドアの閉まる音が聞こえ、室内にひとり残されてしまった。
玩具の震える音が大きく響いている。
室内は暖房がよくきいていて寒さを感じることはないが、裸で放置されているのは心もとない。
「んン……ぁ……」
柔いしびれに身体をくねらせるが、どうすることもできない。
手を使えたらいいのに、縛られた状態ではなにもできない。
リンの言う通りほんのわずかの時間いなかっただけかもしれない。だけど、アルにはなん十分にも感じられた。
ドアが開く音が聞こえ、彼が戻ってきたことを知る。
「リン、やだ……これ、抜いて?」
涙目で訴えると、リンは服を脱ぎ玩具へと手を伸ばした。
抜かれると思いきや、ぐりぐりと動かされ、抜き差しを繰り返される。
「あ……ん……リ、ンやだ……」
「オメガは、発情した時こういい玩具で慰めることもあるんだよ。
慣れておくと、発情期が楽になると思うけど?」
「あん……あ……い、あぁ!」
いきそうだ。
そう思った瞬間、玩具が引き抜かれてしまい、切なげな声が思わず漏れ出る。
それを聞いて、リンは笑った。
「そんなに玩具がよかった? でもこっちの方がいいでしょ」
言いながら、リンはアルに覆い被さり一気に貫いた。
その時初めて気がついた。
リンが、兄の匂いを纏っていることに。
そんな匂い、身体を接触させなければつきはしないだろう。
抱き締めた? それとも……
そんな混乱は、快楽に飲み込まれていく。
「んン……あ、あ、あ……リ、ン……」
「久しぶりだけど、ここ俺の形に馴染んでるね。
中が絡み付いてくる」
「リン、リン……」
しがみつきたいのに、手が動かせない。
オミと何をしたのか聞きたいのに、言葉を紡げない。
何度もいかされ、意識を飛ばしそうになっても、リンはアルを離してはくれなかった。
朦朧とする意識の中で、がちゃがちゃという金属音を聞いた。
手錠を外されたらしく、ぐったりとする身体を優しく抱き締められる。
「アル、俺は……」
俺は、何?
聞きたいのに意識は沈んでいってしまい、なにも聞くことができなかった。
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