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彼の部屋で
静夜の部屋の、静夜のベッドの上にアルはいた。
着ていた防寒着ははぎ取られ、カットソーとジーパン姿になったアルに、静夜が覆いかぶさっている。
甘い匂いが、アルの身体に絡みつく。
これは、静夜の匂いだ。
こんなことしていいのだろうか。
リンの顔が頭をよぎるけれど、静夜の匂いによって徐々に理性が奪われていく。
「あ……」
服の上から身体を撫でられただけで吐息が漏れる。
胸の尖りを指でつねられ、甘い痺れがそこから広がっていく。
「や……ん……」
「乳首、たってる」
笑いを含んだ声で静夜は言い、服の上から乳首を口に含んだ。
唇で乳首を食み、音を立てて吸い上げる。
「ひ、う……」
カットソーを捲り上げられ、静夜はすっと目を細めてアルの肌を見つめた。
「すごいな、痕。
どんだけあの人はお前を抱いてるわけ?」
その問いかけに、アルは首を振ることしかできなかった。
もう何度抱かれたかなんてわからない。
身体からリンの痕跡が消えたことなどない。
毎日のようにリンは自分を抱いているのだから。
身体の至る場所に残るリンの痕跡を、静夜に見られるのは嫌だった。
心が痛い。
リンに毎日のように抱かれている自分が、静夜に抱かれるなんて。
いいのだろうか。そんなことをして。
「あんまり、見ないで……」
絞り出すような声で言うと、静夜はアルの顔を見つめ、笑顔で言った。
「何で。
あの人の痕跡っていうのは気に入らねーけど、それなら俺が上書きすればいいだけだろ?」
そう言い、静夜はアルに口づけた。
触れるだけのキスの後、舌が唇をぺろりと舐める。
アルは自分から口を開き、首に腕を絡めて静夜を受け入れた。
唇の隙間から舌が入り、舌が絡めとられていく。ねっとりとぴちゃぴちゃと音を立てて舌を絡ませあい、そんな口づけでアルはすっかりと息を上げてしまう。
「静夜……」
唇が離れたとき、うっとりとした顔で、彼の名前を呼ぶ。
「好き……静夜、もっと、ちょうだい」
すると、静夜はにやりと笑い、
「あぁ」
と頷いた。
薄暗い部屋で、アルと静夜は裸になっていた。
静夜はアルの股間に顔をうずめ、性器を口に含みながら、後孔に指を差し入れする。
そのたびにアルの身体に甘い快楽が腰から這い上がり、脳を犯していく。
「ひ、あぁ……静夜ぁ……」
身体には、リンの痕跡に重ねるように静夜がキスマークをつけている。
後孔はすでに濡れ、準備はできているだろうに、静夜は一向にいれてくれない。
早く欲しいのに。中にいれてほしいのに。
「うん……静夜、早く、ちょうだい、中……」
吐息交じりにそう請い願うと、口が離れ指がゆっくりと引き抜かれる。
「あ……」
名残惜しげに、思わず声が漏れ出てしまう。
静夜はアルの足を抱え上げると、すっかり濡れた後孔に自身の先端をあてがった。
いれてもらえる。
そう思うと自然と心が躍る。
静夜はゆっくりと中に入って来た。
「あぁ……」
静夜が吐息を漏らし、途中で動きを止めてしまう。
「静夜……?」
「ごめ……中、気持ちいい」
うっとりとした声で言い、静夜はぐい、と奥まで腰をうずめた。
「あぁ!」
ビクン、と背を反らし、アルの視界が一瞬白く染まる。
そこに、静夜は腰を動かしていった。
そのたびに腰がはね、声が漏れていく。
「あん、あぁ……いぃ、そこ……あぁ!」
突き上げられるたび、快楽が身体中を駆け巡る。
「だめ……いく、いくから……」
「イけよ、時間はあるんだから」
そう言って、静夜は腰を深く埋めた。
「あぅ……あぁ!」
びくびくと身体を震わせ、アルは精を吐きだした。
互いの腹がアルの出したもので濡れていく。
荒く息を繰り返すなか、静夜は容赦なくアルの身体を揺らした。
強すぎる快楽に、身も心もがおかしくなりそうだ。
静夜が動くたびに、ぐちゅぐちゅと繋がっているところから音が聞こえてくる。
それはアルの愛液の為なのか、それとも静夜の出したものだろうか。
そもそも静夜は達したのだろうか。
アルはそれすらも考えることができなくなっていた。
「いい、静夜……もっと、ちょうだい。
中、いっぱいに、して?」
「煽るなよ。
俺、抑えられなくなる」
もとより抑える気などないのではないだろうか。
アルは静夜の膝の上にのせられ、下から突き上げられていた。
アルの腰を掴み、身体を上下に揺らしている。
もう何回イッたのかよくわからない。
アルの性器はまた固くたち上がり、だらだらと先走りを溢れさせている。
「アル、俺と一緒に……ずっと……」
「静夜……また、イク……」
静夜の首にしがみ付き、アルは身体を震わせた。
「ん……俺も……」
うっとりと呟き、静夜はアルの腰から手を離した。
「あ……」
中が熱いもので満たされていく。
それを幸せだと思うことは、正しいことだろうか?
リンと、静夜と……兄と。
自分は彼を選んで、幸せになることを望んでいいのだろうか?
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