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熱
午前中に授業が終わり、アルは静夜と共にモノレールで商店街へと向かった。
この町は、モノレールやバスなどの公共交通機関が充実している。
車を持たない学生でも、ある程度自由に町を移動することができた。
本来なら、町の外れにある大きなショッピングモールに行った方がいいのだろうが、あの場所にはいまだに近づけない。
値段は高くなってしまうが、デパートや商店街にいけば何かいいものがあるかもしれないと思い、そちらに向かうことにした。
モノレールに揺られること5分少々。
モノレールの駅を降りると土曜日と言うこともあり、デパート界隈は人が多かった。
カップルや家族連れを横目に、とりあえずご飯を食べに行こうと言う話になる。
「何食べる?」
静夜に聞かれ、アルは黙り込んでしまう。
めったに外に出ないので、何を食べたいかと聞かれると正直悩む。
デパートの周りには小さな飲食店も点在しており、昼時と言うこともあってどこも混んでいるようだった。
慣れない人ごみにめまいを覚える。
ぐらりと視界が歪み、アルは隣りに立つ静夜の腕を掴む。
「アル?」
心配げな彼の声に、頭を振って大丈夫と答える。
「本当に? お前、顔色悪いぞ」
腰を抱かれ、顔を覗きこまれたとき、身体の奥底で何かが膨らんでいくのを感じた。
「アル?」
アルファの匂いが鼻孔をくすぐり、アルは自分を抱きかかえる人物を見上げた。
欲しい。
目の前にいるこのアルファが。
身体の奥底から広がったこの熱を、アルファなら解放してくれるはずだ。
「お前……もしかして」
あたりのざわつきが遠くに聞こえる。
「とりあえず……ここはまずいから……移動するぞ」
その言葉の直後、あたりの風景が歪む。
しらない天井に、知らない調度品。
町にいたはずなのに、ここはどこだろうか。
「俺の家に転移した。この恰好じゃホテルいけねーし。
発情したままで出歩くのは危険だからな」
発情と言う言葉を聞いて、初めて自分がどんな状況に置かれているか気が付く。
以前AVで見た、オメガの発情。
蕩けた表情で男のモノを舐め、自分から欲しいとねだり腰を振る姿――
あんな風に自分もなるんだろうか。あんなふうに……
「せい、やぁ……!」
「……っ……そんなに匂い出すなよ。俺、我慢できなくなる」
余裕のない声で、静夜は言う。
「お前、薬持ってるか」
「くす……り……」
それが抑制剤のことだとわずかに残る理性で気がつくが、それよりも今は目の前にいるアルファがほしくてたまらなかった。
身体が熱い。
自ら濡れることなどなかった後孔から、愛液が溢れてきているのが嫌でもわかる。
アルは静夜の首に腕を絡め、鼻にかかる声で言った。
「ちょうだい……」
「お前、意味わかっていってんの」
「わかって……る、から。静夜がほしい……」
「……っ」
静夜が顔をゆがめ、そして首を振る。
静夜の手が頭に触れる。それだけで首筋がぞわりと粟立つ。手は首筋をなぞり顎へと触れた。
「あ……せいやぁ……」
「むりだ、俺……友達なのに」
そして、静夜はアルの顎をとると唇を重ねた。
触れた唇が熱い。
舌が差し込まれ絡ませれば、じわりと脳まで痺れるような感覚を覚える。
独特な、甘い匂いが自分の身体を包み込む。それは静夜の放つフェロモンだと気が付くのに時間はかからなかった。
アルファの匂いに腰が砕ける。
熱を帯びた、なのに苦しそうな顔をした静夜はアルの目を覗き呻くように言った。
「ごめん」
なぜ謝られたのか。
理性がうねる熱に溶けそうになっているアルにはその理由が理解できなかった。
裸の肌を静夜が撫でまわすたび、アルは快楽の波に襲われた。
まるで割れ物を扱うかのように、静夜は身体をゆるりと撫でていく。
その愛撫がもどかしくて仕方がなかった。
身体の中心にたまった熱は解放を待ちわびているのに。
「静夜……もっと、ちょうだい」
「……アル、煽るなよ」
少し前まで苦しそうな顔をしていたのに、今静夜の目は獣の目のようにぎらついている。
首に、胸に口づけを落とされ吸われ、甘い痺れがそこから広がっていく。
くちゅ、と胸の突起を舐められ、手が勃起して蜜をあふれさせる自身に触れる。
「んふ……あぁ! あ、あ……静夜ぁ……」
自身を上下に扱かれ、アルはあっという間に達してしまった。
「あ……静夜……」
静夜は指にアルが出したものを絡め、それを見せつけるようにぺろりと舐めた。
「甘いな」
と言って、にやりと笑う。
静夜はその手で静夜の太ももを撫で、そして濡れそぼった後孔へと触れた。
「すごい……ここ濡れてる」
うっとりと言い、静夜はアルの足を抱え上げ後孔に指を差し入れた。
「ふ、あぁ!」
指が徐々に増やされ、ぐちゅぐちゅとかき混ぜていく。
「アル……俺、もう限界」
おざなりに中をほぐし、静夜は指を引き抜いた。
がさがさと物音が聞こえ、アルは静夜を見つめた。どうやらゴムを被せているらしい。
そうだ。
そうしないと、できてしまうんだ。
わずかに残る理性でそう気が付くが、それよりも中に欲しい、という思いの方が大きかった。
中を熱いもので満たしてほしいのに。
なのになんで……避妊なんて。
「アル……」
甘い声で名前を呼ばれる。
静夜はアルに口づけて、一気に後孔を貫いた。
「あぁ……!」
びくんと身体を震わせて、アルはあっけなく達してしまう。
静夜はアルの腰を掴んだかと思うと、ゆっくりと腰を動かしていった。
肉がぶつかる音に、ぐちゅぐちゅという水音が混ざる。
中を深く抉られ、奥をつつかれると視界がチカチカと点滅しだす。
「いぃ……なか……静夜!」
彼に手を伸ばすと、静夜は身体を折り曲げてアルに口づけた。
そんな彼の首に腕を絡め、互いの口内を味わうように舌を絡めあう。
口が離れると、うっとりとした顔で、静夜がささやく。
「アル……好きだ」
「え……あ……」
何を言われたのか処理するまもなく、静夜が腰の動きを早めていったためアルの思考は快楽に飲み込まれていった。
「静夜……奥、きてる……」
「アル、すごい締め付け」
余裕のない静夜の声が、絶頂が近いことを示す。
腰が回され、深く突き上げられてアルは叫びにも近い声を上げた。
「あぁー!」
中に入っている静夜自身の形がわかるほどに、きつく締めつめる。
動きを止めた静夜は、荒い息を繰り返しアルの頭を抱え込んだ。
静夜の放つ匂いが、アルの身体を包み込む。
まだ熱は、体の中でくすぶっている。
中に直接アルファの精液を取り込めばすぐに収まるらしいが、けれどそんなことしたら妊娠してしまうかもしれない。
この発情を抑えるには、何度もセックスするしかない。
アルは、うっとりとした顔で、静夜を見つめた。
「お願い……静夜……もっと、ほしい」
「っ……アル……」
やはり苦しそうな顔をして、彼は首を振る。
静夜はずるりと中から引き抜くと、ゴムを処理してゴミ箱に放り込んだ。
彼は、アルに覆いかぶさり唇を重ねる。
中に生まれた熱がおさまるまで、静夜と交わり続けた。
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