12 / 39

挑発

 リンは車を運転しながら心の奥底で笑っていた。  後部座席では、双子がスマートフォンを見つめあれこれ話し合っている。  校門から出てきたアルは、友人の静夜と一緒にいた。  アルの初めてを奪った相手と思うと複雑な気持ちで見つめていたが、あちらもこちらに気が付いたらしく一瞬目が合った。  そう思った時だった。彼がアルの腕を掴んで引き寄せたのは。  挑発された。  明らかに、リンを意識しての行動だろう。そう思うと笑いが込み上げてくる。  今までリンにそんな行動をとってくるのは、親友以外にいなかった。  オメガらしくない親友は口が悪く、発情期が近くなるとリンを挑発するような行動をとっていた。  彼と関係を持つ気などないが、オメガのだすフェロモンに抗うのは、アルファには難しい。  こちらもオメガのフェロモンにあてられないよう薬を飲むしかなかった。  互いに誘惑しあい、どちらかが折れるかを試していた。  今はもうそんなことはしていないが。  まだ高校生の少年に挑発された。  その事実が面白くて仕方がなかった。  アルの様子からして、彼は運命の番とかではないだろう。  けれど彼はアルが欲しいらしい。  さっさとうなじを噛んで番にしてしまった方がいいだろうか?  それとも、このまま駆け引きを愉しもうか?  アルが苦しむ姿をオミには見せたくない。  そう思うと心が揺れ動く。  どちらにしろ、アルの意思を無視して番にした日には彼らの養母である葵に何をされるかわからない。  彼女も強い超能力者だ。  無理矢理番にしたらたぶん本気で殺しにかかってくるだろう。今回の発情の件で、アルと同意があったのか明確にしなかったらキレてつっかかってきた。  彼女が本気になれば町の一部が大破しかねない。  そう思うと、まだうなじを噛むことはできない。  ならば少しのあいだ様子を見ておこうか。  アルは誰を選ぶのか? それはそれで興味がある。  すこしずつ溺れさせていこう。  しょせんオメガは、アルファなくては生きていけないのだから。  リンの下で、白い肌を朱色に染めたアルが、苦しそうな顔をして喘ぎ声を上げる。 「ふ、あぁ……あん……あ、あ……」  半だちになっている彼のモノを口に含み裏筋から先端へと舐めあげれば、アルは腰を引いて逃げようとした。    リンは彼のモノを舐めながら、徐々に濡れ始めた後孔に指を一本いれた。 「ひっ……」  そこはまだ、処女のように固く閉じている。  中をかき混ぜるようにくねくねと指を動かし、奥へと差し込み、ゆっくりと引き抜くと、アルは甘い声を出す。 「あん……ん、ん……」 「まだきついね、アル。  毎日ここにいれてるのにね」 「り、ん……毎日は……やだって……あぁ!」  指を2本、まだ狭いそこに無理やり差し込み、内壁を撫で上げる。  リンの口のなかで彼のモノは徐々に硬さを増し、先端から蜜を溢れさせ始めていた。  それを、わざと音を立てて吸い上げる。 「あ……だめだって、ばあ……でちゃう、でちゃう……!」  だめ、と言いながらアルは腰を浮かせる。  リンは、彼の望み通り彼のモノから口を離すと、アルは名残惜しげな声を出す。 「あ……」 「だめって言ったじゃない、今。  だから舐めるのはやめてあげる」 「え……リン……?」  彼の翡翠の瞳に、不安の色が浮かんで見える。 「自分でいれてごらん、アル」 「え……自分でって……」  自分で。  というのは発情している間に何度か求め、彼は悦んでリンに跨ったが、たぶん覚えてはいないだろう。  戸惑いの表情からそれは見て取れる。  リンはアルの身体を抱き起すと、彼が横たわっていた場所に寝転がった。  アルはおずおずとリンの上に跨り、自分でリンのたちあがったそれに手を添える。  先端が濡れた後孔に当たり、アルは動きを止めてしまう。 「アル?」  優しく笑いかけ、アルの腰を掴む。  一気に引き下ろしたいが、彼が自分からいれる姿を見たく、それは我慢した。  アルは、大きく息を吐くと、ゆっくりと腰をうずめていった。 「はぅ……っ」  先端を飲み込んだだけで、アルは短く声を上げ、びゅうっと欲を吐きだしリンの腹を濡らす。 「あ……」  いれただけでイッたのがショックだったのか、アルは完全に動きを止めてしまう。 「アル。まだ全部入ってないよ」 「リン……」  頬を上気させ、とろんとした目をしているのに、彼はどこか苦しげに見える。  そんなアルの表情が、さらにリンを煽り立てていく。  アルは腰をうずめ、すべてを飲み込むと激しく呼吸を繰り返し、リンの腹に両手を置いた。 「よくできたね、アル。  そうしたら、ご褒美をあげなくちゃね」 「え、あ……あぁ!」  アルの腰を掴み、激しく彼の身体を揺らす。  自重でいつもより深いところに先端が当たっているはずだ。  それが気持ちいいのか、苦しそうな表情は徐々に消え、彼からはねだる言葉が漏れ出る。 「リン……もっと、奥……」 「いっぱいついてあげる。  中を、いっぱいにしてあげる」  そうつげると、アルは嬉しそうな顔をして自分から動き始める。  びくんと、彼は身体を震わせ達しても、リンは動きを止めることはなかった。  ぐちゅぐちゅと繋がったところから音が聞こえる。  一度アルの中に出し、抜くことなく体勢を変え、今彼はリンの膝の上で喘いでいる。  自分からアルはリンの首に手を回し、キスをねだる姿は本当に可愛らしい。  舌を絡めあい、吸い上げると中を締め付けてくる。  アルはすでに出すものがないのか、射精を伴わない絶頂を繰り返している。 「リン……中気持ちいい……」 「アルの中、絡み付いて俺を離さないよ?」 「あ……胸、こりこりしたらまた……」  リンが2度目の射精をするまでに、彼は何度達しただろうか。  ぐったりとするアルの身体をタオルでぬぐうと、彼は手を伸ばし抱き着いてくる。 「リ、ン……行っちゃやだ……」  不安げな顔をして、アルはじっとリンの顔を見る。  そんな彼の頭を撫で、ゆっくりと彼の横に寝転んだ。 「大丈夫だよ、アル。ちゃんとそばにいるから」  そう告げると、彼は小さく頷き、目を閉じた。  本当はオミに甘えたくて仕方ない彼は、時折リンに対して甘えた態度をとる。  たいてい寝ぼけているときにこういう態度をとるが、たぶん本人は覚えていない。  不眠で苦しんでいたときも、睡眠薬を飲んで朦朧とした顔でリンの目の前にやって来て抱きついてきたことが何度かあったが、翌朝には何食わぬ顔をしていた。  時計を見ると、夜の11時を少し過ぎたところだった。  アルが寝入ったことを確認し、静かにベッドを降りる。  部屋着に着替え、部屋を出て風呂場へと向かった。  さすがにこのままでは眠れない。  そう思い廊下を進むと、ガチャリとドアが音を立てた。  オミがトイレのドアを開けて出てきて、驚きのあまり思わず立ち止まってしまう。  オミは一度寝たらほぼ起きない。  トイレで目覚めるなんて珍しい。  猫柄のパジャマを着たオミは、寝ぼけた顔をしてリンを見つめる。  オミはリンに近づくと首をかしげ、眠そうな声で言った。 「アルの匂いがするような気がするような……」  そして、また首をかしげる。  オミは匂いに鈍感だ。  オメガの放つ匂いがわからず、発情期のオメガが近づいても誘惑されない。  だから匂いがどうこういうのは非常に珍しい。  オミはどうでもよくなったのか、お休みと言って部屋とは反対方向へと進もうとする。  そんなオミの腕を掴み、身体を引き寄せると、 「そっちじゃないよ」  と声をかけた。 「え? あれ?」  言いながら、オミは眠そうな目でリンを見上げる。  どうせ起きたら覚えていないだろう。  このままリビングにいって寝られても困るので、オミの身体を抱き上げた。 「り……ん……」  寝ぼけたままらしいオミは、首に腕を絡めしがみ付いてくる。  そんな行動に、心が揺れ動いてしまう。少し前まで彼を抱いていたのに、体の奥底が熱くなる。  だっこしていた時間など短いものだったが、布団につく頃にはオミは寝息をたてていた。  ゆっくりと布団におろし、そっと布団をかける。  額に口づけて、 「おやすみ」  と声をかけても、オミは目覚めることはなかった。

ともだちにシェアしよう!