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第2話

男は、愉快で、愉快で、愉快で、たまらなかった。 笑い過ぎて生理的な涙が、頬を伝い、それは紅に溶けていく。 愉快で、愉快で、愉快で、そして、酷く嬉しかった。 (―――――ああ。愉快だ。) 己を殴り、切りつけ、ただ激情に任せて踏みつぶしていった相手の顔が蘇る。 黒々とした双眼は細まり、口角は上がり―――――笑っていた。 今の己と同じように。 己から解放されると、そう安堵して。 (――――愉快だよ、本当に。) 男はその表情を嘲笑う。 何故なら、その表情はすぐに消えると分かっていたからだ。 苦痛にもがき、それは醜く歪むのであろう。これからずっと、いつまでも。 (――――お前は何も分かっていない。)

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