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第4話
「…、…、…、…、…、」
男の笑いは止まらない。
血の気の失せた顔面は青白く、紅とのコントラストを強調するようだ。
それでもそれは、生気に満ちていた。
男の人生の中で、最も美しく、最も安堵した表情であった。
男に向けられた感情が、憎悪であろうと、嫌悪であろうと、何でも良かった。
ただ感情が、激情であれば何でも良かったのだ。
欲しいものは、柔らかく優しい感情などではない。
息もつけぬ程の奔流が―――己と同じ激しさが―――欲しかった。
それが男にとっての、『愛』であったからだ。
もしも、それが『愛』ではないというのならば、男は『愛』など知らなくてよいと思う。
そして、また。
それが『愛』という名である必要もなかった。
なぜなら、どのような名であれ、それが存在していることは紛れもない真実であるのだから。
名をつけたところで、変わりようなど、どこにもない。
「…、…、…、…、」
男は笑い続ける。
愉快でたまらないのだ。
しかし、男の肺も、心臓も、その活動を静かに弱めていく。
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