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第49話 老人と猫

「―……え?」 「お前の本来の姿は、"猫"。 ―……黒い耳と尾の先が白で黒い尾が視える」 俺は老人のその言葉に焦って頭と尻に手をやった。 だって、今の俺は猫の部分は上手く出さないようにしていて……! ちゃんと人型で、溶け込んでいて……!! 魔力制御だって……お店みたいな……時はまだ苦手だけど、日常生活では大丈夫ななハズなんだ! そんな感情を渦まかせて、忙しなく手を動かして確認する。 そして、出た結果は…… 「……出て、無い……」 「今は、な。どれ、俺に見せろ」 「へ?」 ―グ グ グ …… 「―ぅみゃ!??」 急に頭と尻尾の部分が熱くなった。 な、何これ……!? 怖い! 怖いよぉ! ハーク、ハーク!! 「……ぅ、あ、あ、ぁ、あ……ッ!?」 「くくッ……可愛い耳と尾が出てきた出てきた」 この人物の魔力で、無理矢理猫の部分が引き出される。 ~~~くそ……! 負けるかッ!! 「ゃ……ヤメロぉ!!」 「……おっと……?」 「ら……乱暴する奴は嫌いにゃぁぁあ!!」 俺はそれに抵抗して何とか奴の魔力を引き剥がし、再び耳と尾を内部に仕舞った。 抗った為に、体力より魔力の消費が激しい。 視界にノイズが入って、まともな情報が得られない。 「―……俺の魔力から一瞬でも逃げれるだなんて、面白い猫だ」 「はぁー……はぁー……はー……はー……」 相手は俺の抵抗など気にも留めてない様だ……。くやしい……。 俺が机に手をついて色々整えている内にどうやら距離を縮められ、何と顎の下に手をやられ強制的に上向かされた。 俺の視界はまだ……でも、"覗かれている"のが分かる。 冷たく、強い、空色の瞳…… 「緑の目か。なかなか綺麗だし……容姿もなかなか……か?」 「ふみッ……?」 そう言いながら、顔が近づけられる。 瞬きが出来ない……瞳が……変にチリチリする……。 俺、これ……怖い。 何? 何かされかけてる? ハーク、ハーク……怖いよ、嫌だよ……帰りたいよぉ……。 俺が突然恐怖に駆られ混乱し始めた時、突然別な声が俺達の間に入ってきた。 「―……フェディ! 図書館に行くなら、最初に言え! 探したぞ……ぅわ!?」 「……何だ、ピートか」 「……ぴー……にゃ……」 俺は泣き声、老人……フェディは不機嫌な声で現れた騎士……のピートの名前を呼んだ。 そして俺は突然、老人の呪縛が解け、慌ててピートの背後に回りマントを掴んで涙目でフェディを睨んだ。 ピートは俺が本来の猫の姿の時代からの知り合いで、今でもたまにアジアジに昼飯やら夜に撫でに来てくれる優しい奴なのだ! 自身の背後からフェディに威嚇行動をした俺に、ピートが驚き見た後で、今度は彼に口を開いた。 「何だ……シュン……泣いてるのか? ……って、泣かしたの、お前か! カワイコちゃん泣かすな!!」 「この猫を知ってるのか」 「ああ? 知ってるぜ~? 猫の酒場"アジアジ"って所で働いてる、シュンって猫だ」 「ふぅん……?」 言いながら俺の頭を大きな手で優しく撫で撫でしてくれるピート。うにゃうにゃ。気持ち良いにゃー。 一方フェディはピートから教えられた俺の情報に、興味半分適度で反応している。 そんなフェディの視線に「ぐぬぬ……」としていたら、話しが思わぬ方向に……。 「ところでお前、またそんな老人の姿でいるのか」 「ふん。この格好の方が職業的にナメられないから良いんだよ。 しかも女も男も下らない色目を送ってこない上に、向けられるのは尊敬の眼差し! それにこの姿は、俺の愛して尊敬するお爺様とウリ二つと大評判で並ぶと―……」 「あー、わーった! 分かった! このお爺ちゃん子め!!」 ……え? その老人の姿が、本当の……じゃない? の? 会話を黙って聞いて、老人姿をマジマジ……。 ―すると…… 「……気になるのか? シュン?」 「ふにゃ!?」 「俺の、本当に姿が見たいか?」 「……!!」 俺に向けられた"ニヤリ"顔に、内心、猫の尾が"ぶわり!"と広がった。 何だか…… キ ケ ン !!? 「ふぅん? ……なら、俺の気が向いて、時間が余れば『アジアジ』……って店に行ってやろうか?」 益々高圧的な態度で言ってきたフェディに、俺は「ムカツク」と思いながら…… ……頷いたのだった……。

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