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第2話 人化、そして……
「シュン、おせぇぞ」
「師匠! ごめんにゃー」
今日の魔力訓練は結構複雑だって聞いている。
何だろう? 楽しみ!
楽しみ過ぎて、寝坊したんだけど、そこは黙っておこう。
ガキだけど、「ガキか!」ってからかわれるの分かってるし。
そして今日の授業が開始されて……
「今日は"人化の方法"を教えてやる」
「にゃんと!?」
つ、ついにッ!!
「良いか、人の姿になるのに一番のコツは、"イメージ力"だ」
「イメージ力……」
それなら、俺は元は人だったし、超得意!! ……な、ハズ?
でもでも結構細かく再現出来るんじゃないかな?
そう…今日は強請りに強請った人化の魔法を習う日なのだ! にゃふー!
イメージ、イメージ……。
教えてもらった人化へのプロセスの呪文を心に書きながら意識を集中したら、俺の身体が"ぽわ"っと温かくなって膨れたと思ったら……
「……お? シュン、上手いな」
「え? えへへぇ~~」
人化が完了していた! 俺ってば、優秀~!?
見た目は前世での俺の最後の姿をちょっとイメージして、変化完了~。
ちなみに黒髪、緑目だよ。
それから微調整や部分だけ耳や尻尾…その他の訓練をしばらく受けた。
俺は、自分でも言うのも何だけど結構優秀にこなしていると思う。
これなら、魔法都市に行って、理想の使い魔になれる日も近いかもしれない。
とか「にゃふふ」と思っていたら、師匠から……
「お前、"撫でられる"の好きだよな?」
「うん、好き。ガシガシもワシワシもサスサスもスリスリも……俺を可愛がってくれるなら全部好きだよ!」
師匠の言葉に笑顔で答えたら、少し複雑な顔をされた……なぜ。
言いながら俺は普段撫でてくれる冒険者達や騎士様方、魔術師さん達にパン屋さんに魚屋さん、八百屋さんに果物屋さん、卵売りさんに……と顔を思い出していた。
猫の姿で足に纏わりつくと、皆「可愛い」って、撫でたり抱っこや、食べ物をくれて可愛がってくれるよ?
すると師匠が何かを決意したのか、「うむ!」と言ってから俺に口を開いた。
「―……よし! それじゃぁ、シュンは"アジアジ"っていう魔力持ち仲間の猫の酒場で給仕して人化維持訓練な!」
「ぅにぁ!?」
イキナリ過ぎる、師匠!!
ちなみにこの世界では16歳から成人扱いなんだ。
だから、16歳の俺は一応、年齢的に成人している扱い。
酒場も酒もその他の事も、もうオッケーなのさ!
「そこは給料も出るし、お前が目指してる"使い魔"になる為への魔法都市への旅費や、"ツテ"を作れ!」
「なるほどー!」
「お前は可愛いから、アジアジですげぇガシガシ稼げる! チップもたんまりだ! ただ……まぁ、多少……大人な店だから、色々頑張れ」
「う? にゃ? にゃい?」
な、何だろう? 師匠がの言い方が引っかかるけど?
"大人な店"? お酒が飲めるから??
まぁ、でも師匠が言ったのは良い事が多いよな?
押し! 俺、色々アジアジで頑張る!!
そして『アジアジ』にやって参りましたー。
一階は個室もある広めな酒場で、二階部分は宿泊も出来るみたいだ。
迎えてくれた猫獣人の店長は、夕暮れの金色の瞳の格好良い30歳手前位の男の方でした。
それから俺はここで住み込みで働く事になった。
これで家事スキルアップも狙う!
しかもアジアジは夜は酒場だけど、昼間は軽食を出す飯屋、宿屋も兼ねているというマルチ店だった。
ここに来る客は冒険者から商人、騎士、魔術師に一般の方々……などなど、そりゃもう色んな職種の方々が来るそうだ。
ちなみにこのアジアジは魔力持ちの猫……猫獣人の店として既に認識されていて、万が一"人化"が解けて獣化しても構わないが、それはなるべく回避するように言われた。
そして説明は続き……
「―…ウチの酒場は色んなお客様が"撫でて"くるから、それを我慢して猫耳や尻尾を出さないようにな」
「にゃいッ!」
そうか!
そういう方法で、人化維持のコントロールをするんだな!
了解、りょーかーい。
「返事は良いが、"猫語"にもならないように」
「は、はい……」
うううう……案外難しいな……。
猫語は癖なんだが……。
「ちなみに耳や尻尾がでたら、客はそこを重点的に触りたがるから、注意しろよ?」
「え? 何でですか?」
素でキョトンとした俺の顔を"じー~~ー……"と見た後、溜息をついて、店長は奥の部屋に向かって顎を動かした。
「……俺が少し教えておいてやる。シュン、こっち来い」
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