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第21話 コレ、何?

「いらっしゃいませー!」 現在俺はアジアジにご飯をたべに来てくれる人に、笑顔で接客中! 俺は人化の魔法を習ってから、その姿で猫の俺を可愛がってくれた色んな人達に会いに行ったんだ。 最初は驚かれたけど、俺みたいなパターンって結構あるみたいで変わらず皆可愛がってくれる。 現に今、俺が接客している騎士様は前々からアジアジの常連みたいで、俺との会話も弾む。 そんなに長くなければ、アジアジはお客との会話は一種のサービスで片付けられるんだ。 「……じゃ、シュンはこのアジアジの酒場でも働くんだ?」 「はいー」 「それなら俺とドリンク飲んでくれる?」 「はい! 俺で良ければ!」 ニコニコしながら対応は基本中の基本だよな! 知り合いいっぱい作りたいし、愛想は大事だ! 頼まれたランチメニューの大盛りをセットしながら笑顔笑顔。 そして騎士様は「楽しみにしてる」と言ってスプーンに手を伸ばした。 俺は「はい! ごゆっくり」と言って席を離れ、休憩する為に調理場の裏手へ。 そしたら、裏手で店長のゼスとハークが話しをしていた。 何を話しているか分からないけど、人型で笑いながら話す二人はどちらも格好良い。 と、そこへフェリスさんが現れ、ハークの腕に自分の腕を絡めて"ピト"っとし始めた。 「……にゃに?」 俺は思わず猫語で言葉を吐いた。 妖艶美人なフェリスさんとハークを見ていると、何だかモヤモヤしてくる。 フェリスさんの首に巻かれた赤いリボンが、更に俺の心を不思議と掻きむしる。 モヤモヤモヤモヤ……何だか眉が寄ってきている感じが……。 光景にイライラし始めた時、フェリスさんは腕から手を放し始めて、俺は自分の眉が緩むのを感じた時…… ―ちゅ。 何とフェリスさんがハークの腕を引いて無理矢理屈ませ、頬にキスをした! 「にゃ……!!」 「シュン!」 思わず前に行こうとした時、後ろに引っ張られた。 俺は前屈みになりながら後方を振り返って、何でそうなったか確認をした。 するとそこには困り顔のルアがいたんだ……。 「……ルア……なに……?」 「シュン、どうしたんだよ? 爪なんか出して……」 「ぇ……?」 言われて手を確認してみれば、猫の爪が出ていた……。 普段なら、ありえない……。俺は……何に攻撃するつもりだったんだ? そして視線の先にはハークとゼスとフェリスさん……。 そこで俺は"はっ!"として、ルアに「何でもない! 大丈夫だから!」と答えて三人の元へ駆けた。 「は……はーく……!」 「シュン?」 言いながらハークにしがみ付く。 そしたらもう、言葉が止まらなくなっていた。 「ハークは酒場で俺のところに来てくれるんにゃよね!?」 「シュン?」 「いっぱい撫でてくれるって、言った!」 「あ、ああ、お前のシフト日に行くぞ?」 「絶対にゃ!!」 最後の言葉に力を込めて、抱き付く力を増させる。 すると「ははは」「ふふふ」とゼスとフェリスさんの笑い声が聞こえてきた。 ハークは「シュン?」と言いながら頭を撫でてくれてる。 な、何だろう……この妙な敗北感は……。 お、俺だって、もう成人したもん。大人だもん。だけど、三人から物凄く子供扱いされている気がする。 興奮して出た猫耳と尾がへにょる……。 ハークはそんな俺の腕を身体から解いて、俯いた俺の顔を覗くようにしゃがんできた。 この時、俺は"チャンス!"とだ感じて、素早く動いた。 ―ちゅ! 「や、約束にゃ!」 俺はハークに一方的に唇を軽く合わせて、調理場に逃げ帰った。 後ろでゼスが大笑いして、フェリスさんが「やーん! 見せつけられたぁ~」とか楽しそうに声を出している。 ルアが後ろから追って来て、俺の頭をガシガシしながら「やるじゃないか」と何故か弾む声で嬉しそうだ。 俺は「にゃぅ」と心臓をバクバクさせながら何とか答え、よく分からないモヤモヤした感情が少し晴れたと感じていた。

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