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第22話 お待ちしておりまし……た?
「はい、シュン、出来たよ。……うん、カワイイ!」
「ありがりと、ルア」
ルアの言葉に何となく首に結ばれた青いリボンを弄りながら、鏡を見る。
鏡の中の俺はいつもと違く、少し着飾っている。
そう……今からアジアジの酒場に出るからだ。
丁寧に梳かれて整えられた髪型が、何だか少し大人びて見えてくすぐったい。
ちょいちょいと前髪をわざと弄って照れ隠し。
ルアは俺の変化に満足顔でご機嫌だ。
そして俺はルアと一緒にフロアに行き、ボックス席にルアと座った。
新人の俺はまだルアに色々教えて貰い、覚えていかないとな!
ルアは「初日だけど、いつも通りのシュンで良いんだよ。お客は僕達を撫でて、それを楽しむから」と言って頭を撫でてくれた。
俺はルアの言葉に「うん」と言って頷いた。
緊張しない方がおかしい。無理。……始まってしまえば、そうでもなくなると思うけど、未知の世界だ。
お客さんは本当に俺を優しく撫でてくれるかな?
そしてカチコチのままでアジアジの夜……酒場が始まった。
どこからともなく流れる音楽は、昼の明るい雰囲気のものとは違い、どこか安らぐイメージだ。
お客もジワジワと増えていき、仲間の猫達にグラスを渡し、撫でながら談笑している。
見ているとどのお客もゆっくりと優しく撫でている様で、何となく肩から力が抜けてきた。
もしくは、俺もこの店の空気に慣れてきたのか……。
―コトリ……
……そんな俺の隣に……視界にアイスが浮かぶメロンソーダの入ったグラスが置かれた。
あ。もしかして、ハーク?
きっとそうだ! ハークはお店に来てくれるって言ったもん!
ハークが早速来てくれたんだ!
いっぱい会話して、俺も優しく撫でて貰おう!!
俺は期待感に溢れ、グラスを置いた相手を確認した。
「やぁ、君は今、良いかな?」
「ハー…………にゃ!?」
視線の先に居たのは、身形の良い優男だった……。
そしてルアが息を飲み、周りがザワついたのを感じた。
「可愛い新人くん?」
夜空になる前の紫の空をした瞳が俺を閉じ込め、弧を描いた。
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