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第32話 来たよ?

「―……何で、こんな……俺を……」 俺を襲った人物に……頭が真っ白になった。 「……それは、シュンが可愛くて……どうしようもなく欲しくなったんだ……」 俯いていた顔を上げ、夕日色の瞳が俺に向けられた。 暗く、どこか燻り燃える緋色。黒に繋がる橙の……炎。 「……っ」 俺はその色が怖くなり、シーツを引き上げて身体を隠して震えた。 嫌な汗が……そして、嫌な疼きが身体に広がる。 恐怖による震えと解放を求める震えが同時に起き、俺はぐちゃぐちゃな感情のままポロポロと涙を零した。 「すまなかった……」 変に静かな部屋に、ヨセムの声が響く。 俺もルアも……ヨセムも次の言葉が出ない……出せない空気の中、新たな人物が現れた。 「ルア、来たぞ! シュン、大丈夫か!」 何と現れた人物とは店長……ゼス。 そんな店長の手にはロープが握られており、それでヨセムをぐるぐる巻きにしていた。 ルアの魔力は何なのか分からないが、強い拘束の類って事は何となく分かる。 ヨセムはまた俯いて、いつの間にか猿轡を布でされていた。 そしてヨセムから離れて俺の元にノルが近寄って来て、肩の上でプルプルし始めた。 「散々だったな、シュン。ハークを呼びに行かせたから、もう少しの辛抱だ」 「……ハーク……?」 「ああ、そうだ」 「ハーク……はーく……はぁ……くぅ……ふみゃぁぁん……ふみ、ふみぃ……」 俺は店長の言葉に何かが決壊して涙が止まらなくなった。 俺の変化に店長は「シュン、ハークは……アイツは絶対に来るからな」と励ましてきた。 店長の言葉に頷き、その時を待った。 暫くするとこちらに近づいてくる重い足音がし、俺の部屋の前で止まったかと思うと…… 「シュン……!!」 ハークが本当にここまで来てくれた。 俺は「ハーク」と名前を呼んだらハークが俺の方を見、舌打ちをして店長に「大きな布を二枚用意してくれ」と頼んでいた。 よく見れば髪がかなり乱れている。寝起きだと分かる。とにかく急いで来てくれた事に、胸の奥が熱くなって涙がまた溢れた。 そして俺は貸された大きな布にノルと一緒に裸のままぐるぐる巻きにされ、頭からこれまた大きな布を被せられた。 そんな俺をハークが横抱きにして歩き始めた。向かう先はハークの家だそうだ。 歩く僅かな振動でも俺の身体は酷く疼き、その度に嬌声が零れた。 「シュン、これを咥えていろ」 「うにゃ……」 俺は途中で下ろされ、渡されたハークのハンカチを咥えて嬌声を押さえられた。 でも、そのハンカチから香るハークの匂いに、正直更にクラクラとし息が上がって身体が疼いていた。 触ってないのに乳首が尖り、ペニスも上向き布に先端が擦れて先走りの吐き出しが起こっている。 横抱きにされ、ハークに身を寄せながら俺は布の中でハァハァと早く解放される事を願っていた。 そして夜中の静寂に包まれている街を抜けて、俺達はハークの家に着いた。 家に入るなりハークはまっすぐに風呂場に向かい、ドアを開けた。 それから俺は風呂場のタイルの上で布を取られ、その隙にノルが風呂場から出て行った。 ハークはノルに気が付いていると思うけど、それを無視して俺の具合を見始めた。 俺は今……ハークの家に……居る。 「―……シュン、マタタビの媚薬を使われたのか……? くそッ!」 ……何、それ? ハーク、どうして怒っているの? ―ハーク、……俺、家に来たよ? 俺は舌を少し出し…… 「ハーク……約束の……キス、シて……」 ……震える声で名前を呼び、潤む上目で両手を広げた………… ―いっぱい、いっぱい……キス、しよ? 「はぁ……く……」 身体の疼きからか掠れた声でハークを呼べば、俺の身体は抱き上げられ…… 「……シュン……! ……ん、ン……」 「ぁ……は、ンンっ……ハーク……ン、ン……ぁ」 ……唇を覆われる様に重ねられ、俺の口内にハークの舌が滑り込んできた。

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