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第40話 ガブガブスティック対決!
「……ニンジンとリンゴが売り切れ!?」
「ああ、そうなんだ。悪いな、シュン……。
ついさっき毎日大量買付けをしてくれる新規の店が出来てさ……仕入れ量を増やすつもりでいるけど、今日はもう無いんだ。
しかも他の店のも買っていてたみたいだぞ?」
俺は街の市場の行き着けの八百屋のおじさんから言われた内容に、ショックを受けた。
そ、そんな~~~~!
今日は『ニンジンのシフォンケーキにニンジン&りんごジュースのケーキセット』がおススメなのに!
しかも店の仲間がもうボードに書いちゃってて……。
それにセットを楽しみにしてくれてるお客様もいる、案外人気のセットなのだ。
もちろんこの二つを使う料理は他にもあるし……材料が不安そうだから急遽買いにきたのだけど、何て結果なんだ!
この八百屋が市場で一番大きくて、いつもここで買っているだけに、俺の中に動揺が……。
「ン? ……大量買付け……"店"?」
「ああ。……そうだな、シュンがいる『アジアジ』みたいな店らしけいど、そこは夜だけ営業の酒場らしいぞ?
あ、これチラシだってさ。要るか?」
「要る!!」
アジアジの夜……酒場みたいな店……? 飲んで、お客様に撫で撫でしてもらえるの?
開店が夜なら、まだ朝だし、交渉してニンジンとリンゴを少し買わせてもらえないだろうか?
ともかく、一旦店に戻ってみんなに相談だ!
メニュー変えなきゃかもだし!
俺は慌てて店に戻って、「みんな、きーてくれよー!!」と八百屋のおじさんから得た情報を説明した。
―そして……
「……ここ、だね」
「うん」
みんなと話した結果、視察も兼ねてニンジンとリンゴを交渉する事になり、俺とルアにその任が課せられた。
視察も兼ねて……ってのは、みんなに話したら、「酒場の内容が、被ってる時点でライバル店だよ!!」という結果に至ったからだ……。
た……確かに……。
開店前の店の戸を叩き、ドア越しにアジアジの名前を出してニンジンとリンゴの交渉をしたら奥に聞いてくると言われ少し待たされた。
そしてドアが開かれ中に入れば、そこは小さなホールになっていて、数人の兎獣人が居りその中から一人が俺達の方に歩いてきた。
「やァやァ! 猫さん方、"キャロ☆ガーデン"にようこそ~♪」
真っ赤な夕日色の目に、白い髪と肌に長い白耳。白が新雪の様で何だか輝きすら感じる。
ここは獣部分を出していくスタイルなのか……?
そして小さく纏まった華奢な容姿は『可愛らしい』の一言に尽きる、白い兎獣人。
ふむ? 背丈は俺と同じくらいか……。
白シャツ黒ベストの灰色チェックの半ズボンに紺ハイソックス、革靴……にフリル付きのワンポイント前掛け……がここの制服か。
ちなみにアジアジは服装はフリーだ。
「僕はヴィンセントって言うんだ。ヴィンちゃんって呼んでね♪」
そう言ってテンション高めな彼にウインク付きで挨拶を受けた。
しかもこの兎獣人が交渉相手の様で、彼はサクサク話し始めた。
「話しは聞いたよ。うん、……良いけど、僕にゲームで勝ったらね!」
そして彼の近くに他の兎獣人がニンジンスティックを入れたグラスを持って来た。
彼はのニンジンのステックを一本ッ引き抜き、俺の方に身を寄せてきた。
「じゃ、コレでゲームしよッ!
ルールは簡単! 最後の一欠けらを食べた方が勝ちだよ。
僕に勝ったら、四箱分のニンジンとリンゴを買い付けお値段から少し割り引いて売ってあげる♪」
スティックの端を口に咥えて、俺に向かって「ん」と突き出して、挑発的な瞳で見てくる。
俺と……やろぉってのか!! 良いぜ!? 受けてたってやる!!!
俺は瞳にそういう思いを込めて差し出されたニンジンの端を咥えた。
そしてルアと他の兎獣人の立会いの下、ゲームを開始したのだけど……。
対面でニンジンを食べながら迫るヴィンの迫力が物凄く、俺は数口で「ヤバイ」と感じ、噛みながらスティックを吸った。
食べた量じゃない! 最後を食べたら勝ち!!
すると何とタイミングが合ったのか上手い具合に俺の口内に"スポン!"と収まった。
俺は噛まないまま舌の上にニンジンの欠片を乗せて、勝利を確信した。
しかし、ヴィンはこの一瞬の隙を見逃さなかった……。
「……ン……!?」
迫る勢いのまま俺の後頭部を押さえて口を塞ぎ、口内に舌を強引に入れ……最後の一欠けのニンジンを奪い取ったのだ!
そんなヴィンに俺はポカンと口の端から涎を垂らして、口を大きく開いてしまった……。
しかも俺は驚きのあまり、猫耳と尻尾を出してしまって……。
「―にひっ! これでヴィンの勝ちだね、猫くん! あ~~、最後の欠片は甘くて美味しい勝利の味だ!!」
「!!」
「んぶぶぶっ! 猫くんよわぁ~い! 甘いしテクも無いし……コレなら『suyasuyaピロウ』の方が強敵かなァ?」
く、く、くやしい!!! 無性に腹立つ!
こうなりゃ、ハークに練習を付き合ってもらう!!!
しかも『suyasuyaピロウ』って……?
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