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想いを重ねる夜
締め日だったせいでちょっとだけ残業した俺宛に夕方、穂高さんからメッセージが届いた。
お父さんについてのものだと分かったので、帰り支度を急いでしながら読んでみたんだけど――。
(いったい何をして、こんなことになったんだろう?)
『現在、お父さんはここでみんなに囲まれながら、楽しく過ごしている。帰るために乗る予定だったフェリーも出航したし、今夜は我が家でお泊りが決定だ』
そんなメッセージと一緒に、写真が添付されていた。
そこに映し出されていた見覚えのある壁の感じで、漁協の倉庫だというのがすぐに理解できた。
穂高さんのお父さんが来たときに、ここの広い空間を使って海鮮物を中心にしたバーベキューパーティーをしたんだ。その様子を再現しているような写真の中に、船長さんや漁協のおばちゃんたちに囲まれて、ちょっとだけ困った顔したお父さんの姿が目に留まる。
穂高さんが力技で何とかした結果、漁協に連れ込むという荒業に転じたんだろうか。なんにせよ、早く顔を出さなきゃいけないのは当然のことだろうな。
スーツの上に薄手のコートを羽織り、周りの職員さんに挨拶してから足早に職場を後にしたのだった。
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