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想いを重ねる夜14

「お義母さんの第一声が『あらまぁ、見ないうちに随分と老け込んだのね』なんて言って、カラカラ笑ってた。高熱の中で酸素マスクをするくらいつらいはずなのに、とても元気そうに大声で笑って、母さんの顔を見ていたよ」 「見たかったな、感動の再会……」  俺が生まれる前から逢っていなかったのだから、20年以上ぶりの再会になる。お母さんが老け込むのは当然のことだけど、ばあやだって同じくらいに老け込んでいるはずなんだ。お母さんは何と言って返したんだろう? 「おまえもここでの仕事が忙しいだろうが、暇を作って帰ってこい」 「はい……」 「帰るついでだ、あの男と一緒に」  俺が返事をしたあとに付け加えられた言葉は、明らかに嫌そうな感じに聞こえた。それでも俺ひとりじゃなく、穂高さんを誘ってくれたのはすごく嬉しい。 「わかった。かならず穂高さんと一緒に、実家に顔を出すよ!」  弾んだ調子の声を聞いたお父さんは小さな溜息をひとつついてから、布団を退ける音を立てた。いきなり起き上がったっぽいそれを暗闇で聞き、小首を傾げるしかない。 「誤解するなよ。あの男と仲良くしようなんて気は、俺にまったくない。とりあえずお義母さんをまじえて、今後の話をするだけだ!」 「ばあやは穂高さんとの付き合いに賛成しているけど、それでも話し合いをしなきゃならないんだ?」  疑問を口にした途端に、息を飲む様子が空気で伝わってきた。目が使えない分だけ耳や肌で、お父さんの感情を探ろうと必死になる。 「えっ? 賛成してるだと!?」  信じられないという驚きに満ちた声が、寝室に響いた。 「はじめてばあやに紹介した時点で、すんなり受け入れられたんだ。事前に話をしていた関係もあっただろうけど」 (すべては穂高さんの人当たりのよさや性格、もろもろのお蔭だと思う) 「これだから女ってヤツは、いくつになっても男の見た目に騙されて!」 「それってどういうこと?」 「お義母さんだけじゃない。母さんもアイツと千秋の付き合いについて、いいんじゃないかと言いだしてるんだ」  ばあやだけじゃなく、お母さんまで許している現状に、思わず笑みが浮かんでしまった。俺がこうして微笑んでいるなんて、お父さんにはわからないだろうな。

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