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第七章 想い出
日本からイタリアまで飛行機で、最短十二時間のフライト。時差は十八時間。(サマータイム時は十七時間)日本が十時ならイタリアは十八時となる。
今回は直行便を利用しての旅をした。
父さんが経営するホテルが近いということで、ヴェネツィア・マルコ・ポーロ空港に降り立つ。たくさんの外国人に紛れていても頭ひとつ出ているであろう背の高い父親を捜し、キョロキョロしていたら、ポンと軽く肩を叩かれた。
振り向いた瞬間、大きな体が自分を包み込む。
「Sonovenutobene,ilMt.Hodaka.Ediventatomoltogrande.」
(よく来ましたね、穂高。とても大きくなって)
ぎゅっと抱きしめられながら告げられたイタリア語が分らず、苦笑いするしかない。
ラテン系のイタリア人らしい挨拶の仕方だなぁと思いながら、背中を労わるように叩いてあげた。
「お久しぶりです、父さん。お元気そうで何より」
父さんは俺の発した日本語に大きな体を震わせ、アハハハと大笑いした。
「すみません。君があまりにもステキな男性になっていたので、すごく感激しました。よく来てくれました、嬉しいですよ」
ふたたびハグしてから手を離して遠くからもう一度、俺の顔を見つめる。前回逢ったのは、かれこれ十年くらい前。お互い容貌に変化があって、当然だと思われる。
父さんの髪の毛には白いものがちらほら混ざっているし、掘りの深い顔にも薄っすらとシワが見えていた。だけど苦労した老け方じゃなく、格好良く年をとった感じ。憧れてしまうな――。
「その瞳、本当に君は瑞穂にソックリです。いろいろ思い出してしまう」
下唇をきゅっと噛みしめてから、何かを振り切るように首を横に振って、入り口に導くように俺の背中を押してきた。
「こんな場所で話をするのも何ですから、移動しましょうか。車を待たせてあります、行きましょう」
さきほどした切なげな表情を隠すように、笑いかけながら車に乗り込む。そして一路、父さんと母さんが出逢ったきっかけになった、ホテルに向かったのだった。
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