59 / 175

残り火2nd stage 第2章:波乱万丈な夏休み5

***  腕の中で抱きしめている千秋が身じろぐ気配で、ふっと目が覚めた。障子からきらきらと朝日がこぼれていて、晴天なのが見てとれる。 「う……ん、朝?」    眠そうな顔して、俺を見上げる寝ぼけ眼な可愛い千秋。ずっと見ていても、飽きない自信がある。 「おはよ」 「穂高さん……。おはよぅ、って、あれ?」 「どうしたんだい? 不思議そうにして」  ぼんやりした表情から一転、俺の腕の中できょろきょろした。 「えっ!? あれ? どうして?」 「どうして立場が入れ代わっているんだろうって、ビックリしたみたいだね」  言いながら、枕元にある時計に目をやる。午前4時54分か。 「……すごくビックリした。どうして、穂高さんの腕の中にいるんだろうなって」  ビックリしたと言いつつも、どこか恥ずかしげに俺が着ている浴衣をぎゅっと握りしめた。 「ビックリしただけかい?」  まるで俺を捕まえたといわんばかりに掴んできたら、それに応えたくなる自分がいる。君が片手で掴むなら、俺は両手でもっと強く捕まえるよ。抱きしめて離さないからね。 「うわっ!? あの……」  薄い浴衣の生地をなぞる様に、背中を撫でてあげた。反対の手は千秋の帯に触れてみる。 「ね、どうして帯がこんなに緩く結ばれているんだい? まるで、簡単に解けるようになっているけど」 「そんなっ。ちゃんと結んでいたよ」 「俺の腕の中で寝ていた千秋は、寝相がとても良かったからね。寝乱れることがないと思うんだ」  着崩そうとしているのに慌てて俺から手を離し、胸元をわざわざ合わせる千秋。そんな彼の耳元にくちびるを寄せてやり、笑いながら告げてあげた。 「もしかして俺を抱きしめながら、興奮することでもしていたとか?」 「しっ、しないよ、そんなのっ」  慌てふためく可愛い千秋に、更に追い討ちをかけてやる。 「へえ。でもココは正直だね。すごいことになっているけど。ん?」  上が着崩せないのなら、下から責めてあげよう。  背中に回している手で上半身を自分に押しつけながら、首筋に顔を埋めた。帯に伸ばしていた手を使って、浴衣の裾を一気に捲りあげる。 「ちょっ、朝か、ら……何やっ、て……んぁっ!」 「何やってって朝だからだよ。おはようの挨拶をきちんとしないと。千秋にも千秋自身にも、ね」  自分がつけた首の根元にある痣にちゅっとキスを落しつつ、はらりと浴衣の上半身を脱がしていった。 「ああぁっ、も、ダメだ、ンンっ……ったら」 「ん~。浴衣を脱がすのは簡単だが、問題は身体に巻きついている、この帯だな。千秋を転がすワケにもいかないしね。時代劇みたく、あーれーぇってされたい?」 「んもぅ! 何考えてい……る、のっ」  疑問を口にしながら、しっかりと千秋の感じるポイントを入念に責め続けていたので、ほぼ半裸状態の彼の肌は、うっすら桜色に染まってすごく綺麗だった。 「何って今後の予定を――どこから挨拶しようかと」  ぷっくり膨らんで俺を待ちかねている胸元に、舌を這わせながら挨拶しなければ。 「あっ、んぁ……あぁ、っ!」  空いている方にも挨拶を――左手親指と人差し指で、呼び鈴を鳴らしてあげる。 「やぁ! 痛い、よ……っ、ぐりぐりしすぎ、だってば」 「ごめん、可愛くて。つい」  潤んだ瞳で抗議されても、それすらも俺の胸を締めつける材料となってしまう。  しかしいい感じで肌に熱を持ち、感じまくっているからこそ、ぐりぐりしても平気だろうと思ったんだが……。いつもなら「もっと」って言う行為なのにな。やっぱり邪魔しているのは、『帯』だろう。  起きてる俺は縄抜けの術よろしく、さっさと外すことができるが、寝たままの千秋だと、帯を下にズラすのも一苦労だな。 「おおっ、そうだ!」 「わっ!? いきなりどうしたの穂高さん?」  驚く千秋を尻目に、起き上がって緩めていた帯を一気に足元に落して、さっさと浴衣を脱ぎ捨てた。そのまま何ごともなかったかのように横たわり、千秋の上半身をよいしょっと抱き起こしてあげる。 「千秋もさっきの俺みたいに、浴衣を脱いでごらん」 「う、うん。分かった」 「その後は――俺はこのままでいるから、感じさせて欲しいトコロを千秋から誘導してみて」  俺の言葉に「ひぃっ」なんていう変な声を上げ、微妙な表情のまま浴衣を脱ぎ、真っ赤な顔で見下ろしてきた。 「ゆゆゆ、誘導って、な、そんな……」 「さっき痛いことをしちゃったからね、お詫びだよ。千秋が触れていい場所に俺の手を持っていったり、感じさせて欲しいところを口元に寄せてくれるだけでいいから」  ――下から感じる千秋の顔を見ることができたら、それはそれで乙なものだろう。 「そんなところに突っ立っていると、ずっとその状態でいてもらうことになるからね」  全裸の千秋を寝たままじーっと眺め倒してやると、耳まで赤く染めた彼が渋々俺に跨ってきた。 「どうしてほしいんだい?」 「……おはようのキスから」  目を閉じて、くちびるを合わせた千秋の身体をぎゅっと抱きしめてから、誘われるままに快感を与え続けたのだった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!