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残り火2nd stage 第3章:助けたい
※ここからの章は掲載している【小児科医 周防武の最後の恋】(一緒に島へ)というお話とリンクしております。
看護学生の王領寺 歩と小児科医の周防 武が、穂高さん達のいる島にやって来ました。ふたりがやって来た理由は、周防の両親に自分たちが付き合っていることをカミングアウトするためだったりします。
「親父が考えてるような友達付き合いじゃないよ。コイツとSEXしてる。肉体的な深い関係なんだ」
そう言い放った周防 武←いやこれ、スゲェ告白だよな(´-∀-`;)
この場面を書く時、無駄にドキドキしてしまったよ。
そんなワケありのふたりに、穂高と千秋が出逢うのですが事件が勃発!?
いざ勝負!( ・-。-)X(-、- ) ジャキーン!!
とは、ならないと思われ――とにかくカミングアウトからいろんな事が展開し、目の離せない状況を毎日お送りいたしますので、楽しんでもらえたら嬉しいです(´∀`)
***
いつもなら、こっちが呆れ返るくらいにしつこく迫ってくる穂高さんが、
『……ご飯を食べようか』
なぁんてマジメな顔して言ったので、お言葉に甘えたんだけど――朝食後も手を出さずに、洗濯や掃除など家事に勤しんでくれた。
その間、俺は大学のレポートをまとめながら、その働きぶりをじっくりと観察させてもらいつつ、いつ手を出されてもいいように身構えて……両拳を時折ぎゅっと握りしめて身構えていたのに、いっこうにやって来る気配がない。
(――おかしい、何を考えてるんだ?)
俺が穂高さんを子ども扱いしたのをいいことに、見事それに乗っかり、可愛い穂高くんを演じられてしまった。
やられたっ! って思ったときには既に遅く、穂高くん的な発言をされたり俺の手を煩わせてくれたりと、散々翻弄しておいて現在はこの扱い。
拒否しまくった結果なんだろうか。それとも自分が言ったことを実行すべく、きっちり1週間、手を出さずにいるために距離をとっているのか?
いつもならそろそろ、ちょっかいをかけてくるタイミングなのに――何だか寂しいなんて思ったりして。
『千秋、どうした? ぼんやりして。疲れたのかい?』
とか何とか言って、後ろから抱きしめてくれるんだ。穂高さんのぬくもりがえらく気持ちよくて、そのまま寄りかかったら、ちゅってキスされてしまう流れを想像しちゃう。
「はい、どうぞ千秋」
その声にハッとして、一気に現実へと引き戻された。目の前にドアップのイケメンの顔があり、ぶわっと頬に熱を持つ。
「ほ、穂高さんっ!?」
「コーヒー淹れたんだ。千秋のは、甘めのカフェオレにしておいたよ」
優しく俺の頭を撫でながら、くすくす笑った。
「あまり進んでいないようだが、ちゃんと夏休み中に終わるのかな?」
撫でていた手をすっと退けて、俺の目の前に座る。
いつもなら隣に並んで座るのにな。手を伸ばせばすぐに触れられるけれど、この微妙な距離感が結構もどかしい。
「大丈夫ですよ、多分……」
淹れてくれたカフェオレに、ずるずると口をつける。穂高さんを意識しすぎて、声が裏返っちゃった。
あたふたしてる俺を見やり、ふーんって言いながら同じようにコーヒーに口をつけて、ため息をつく。もしかして朝からばたばたしていたから、疲れているのかもしれないな。
「あの、穂高さん」
「ん……?」
「寝なくていいんですか?」
言ってしまってから、しまったと思った。これってまるで、俺から誘ってるみたいじゃないか!? 『寝なくていいんですか、俺と?』って、言わなかっただけマシかな?
だだだだって、寝るときはいつも俺をベッドに引きずり込んで、アレコレしてからぐっすり寝ているから、その……。
「どうして、赤くなっているんだい?」
返事キター……って、突っ込むトコはそこなのか!? 質問を質問で返さないでほしい。
「べっ、別に。深い意味なんてありませんよ」
手に持ってるあったかいコップを両手で包み込み、あさっての方を向いた。
(――ぜーったい分かってる。この人は俺の赤ら顔の意味が分かってるくせして、こうやってワザと聞いてくるんだから、もう!)
分かってるのにポーカーフェイスを崩さず、うりうりと俺を責めるんだ。ごり押しじゃなく、ねちっこい感じでもなく、うりうりってところがミソ。
「やっぱり千秋は優しいね。お言葉に甘えて、ゆっくりと寝ることにする」
穂高さんの言葉に恐るおそる視線を戻したら、うーんと気持ちよさそうに伸びをし、アクビをしている姿を捉えた。そのまま立ち上がり、すっと俺の横を通り過ぎていく。
――あれ? 誘われなかった……。
「千秋――?」
「はい。なんでしょう?」
寝室から、くぐもった声で俺を呼ぶ。布団の中に入ったのかな。
「君って、思っている以上に頑張り屋だね」
穂高さんの告げた言葉の意味が分からず、首を傾げるしかない。
「……寂しければ、言ってくれればいいのに」
やっぱり、俺の心バレバレじゃないか。
「そんなに寂しくないですって。こうやって傍にいるんですし」
そう、夏休み中は一緒にいられるから――穂高さんの顔を見て、直接身体でその存在を感じることができるのだから、これ以上のワガママを言いたくはない。
「俺が寂しいんだけどな」
さっきよりも近くなった声色に顔だけで振り向いたら、後ろに立っていた。なぜかタオルケットを頭から被り、少しだけくちびるを尖らせている。
「えっと……?」
「正座、崩してくれないか」
言われた通り慌ててそれを崩したら、素早くその場で横になり、太ももの上に頭を置いて、俺の体をぎゅっと抱きしめた。
――何だか、オバケに抱きしめられているみたいだ。
「床の上で寝るなんて、疲れがとれないんじゃ?」
「大丈夫だ、問題ない。股間に顔を埋めたりしないから」
いやいや、そこの心配じゃなくって――
「いや、あの穂高さんの体の疲れが問題であって、俺の心配はですね」
「勉強の邪魔になるのかい?」
「それは大丈夫、ですよ」
むしろ穂高さんのぬくもりがじわりと伝わってきて、安心感が倍増する。
「ワガママばかり言って済まないな。ひとりでベッドに寝るのが、どうしても寂しくて」
「……俺も寂しかったから。嬉しいです」
素直に自分の気持ちを言ったら、それはそれは喜んだ表情を浮かべて、服に顔を擦りつける。
「おやすみ、千秋……。やっぱりこの……ぬくもりがないと、寝られなくて、ね……」
抱きしめている穂高さんの腕の力がすっと抜け落ち、あっさりと寝てしまった。
「1週間我慢させるのも、何だか可哀想に思えてきた。俺から求めれば、無きにしも非ずだっけ?」
なぁんて穂高さんに見事、ほだされてしまった俺。
後にこれが作戦だったことが明るみになるんだけど、揉める気力が起きなかったのは、やっぱり仲良くしていたかったからなんだ。
……ずっと、一緒にはいられない。夏休みは限られた時間なんだから――。
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