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Final Stage 第6章:恋の炎は心の芯に灯し続ける6

穂高(と千秋)の苦難 その2  朝、目が覚めて隣で寝ている穂高さんを見たら、白目が充血しているだけじゃなく、うっすらとクマを作った状態で笑顔を浮かべていた。 「千秋、おはよう……」  そして、やや掠れた声で挨拶されてしまい、口ごもるしかなかった。  キスを阻止してからガックリした様子が、手に取るように分かった。余りにも可哀想に思ったので寝返りを打って、わざとくっついてあげたんだ。  くっついた途端に、穂高さんの体温がじわぁっと伝わったお陰で、あっさり寝てしまった。俺が傍にいるせいで穂高さん自身は、あまり寝られなかったのではないのかな。  あ、自身って2通りの意味があるけど、両方ってことでヨロシク! 「おはようございます。穂高さん、大丈夫?」 「大丈夫って何がだろうか? 今日も元気いっぱいだよ、ふっ」  眠そうな目を擦りながらゆっくり起き上がり、うーんと伸びをする。 (見るからに、すっごくダルそう。まったく元気に見えないんですけど) 「そう。元気で良かったですっ」  勢いをつけて穂高さんのほっぺたに、ちゅっとキスをしてあげた。少しでも元気になりますようにって。 「うっ、千秋……」  途端に瞳が潤んでいき、しょんぼりした顔になってしまった。もしや逆効果だったのか!? 「あの、穂高さん」 「就職試験頑が張れるような朝ご飯を作らねば! 顔を洗って、直ぐに準備しないといけないね」  ささっと涙を拭ってベッドを飛び出していく大きな背中に、声をかけることができなかった。自分のせいで、随分と穂高さんに無理させちゃってるな――。  意を決して追いかけるようにベッドから出て、洗面所にいる穂高さんを後ろからぎゅっと抱きしめてあげた。 「……朝ご飯作るの、一緒に手伝ってもいい?」 「えっ!?」 「少しでも傍にいたいから。いいでしょ?」  穂高さんの顔に強引に腕を回し、振り向かせてからくちびるを重ねてすぐに離れた。 「千秋、駄目だよ」 「どっちが?」 「勿論、両方に決まってる」  喉で低く笑いつつ、穂高さんから口づけてくれる。触れるだけのキスじゃなく、貪るように深く口づけられた。そこから想いが流れ込むように伝わってきて熱となり、躰が一気に熱くなる。  頭がボーっとしてきてよろけそうになった寸前のところで、腰を抱き寄せられてしまった。 「千秋、大丈夫かい?」 「あ、はい。すみません」 「千秋を元気にさせるつもりが、俺が元気になってしまったね。参った……」  一瞬だけぎゅっと抱きしめてから、ぱっと両手を上げて俺の躰から手を放して肩をすくめる穂高さんの顔は、いつも通りになっていた。 「俺も元気になれました。ありがと穂高さん」  うふふ、アハハと微笑み合う俺たちの試練は、まだまだ続くらしい。一体、何を仕掛けるつもりなんだよ、作者さん(涙)

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