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残り火本編第一章 火種18

*** 「あっ、あのですね、その。……股間のモノのお仕置きについてなんですけど」  レストランを出てすぐに、言わなければならないことを指摘しようと、思いきって話しかけてみた。 「何だい、改まって。頬を染めながら必死に何かを伝えようとするその姿、今すぐにでも押し倒したいね」 「押し倒さないでくださいっ!」 「じゃあ百歩譲って、そこの塀で壁ドンしてキスするのは、どうだろうか?」 「思いっきり人目があるので、どれも止めてくださいっ」  困り果てながら穂高さんを見上げると、どこかワクワクしている表情を浮かべていた。何だかこの状況を、個人的にすごく楽しんでいるみたいだ――  ……俺としては、何とかしたいというのに。 「そんなに難しい顔して、眉間にシワを寄せていたら、老け込んでしまうよ。よしよし……」  俺をなだめる様に、頭を撫でられる始末。――ああ、もう。 「股間のモノのお仕置きについてなら、心配いらない。ソフトにするから」  ソフトにするって、一体どうやってソフトにするんだよ。想像力のない自分は、それが何かが分からない。頭から煙が出そうだ。 「すみませんが、ソフトもハードも俺はもう無理っていうか」  撫でられている手を退けながら告げると、そうかと頷いた。 「君は淡泊なんだな。残念」 「やっ、俺は普通だと思いますよぅ。穂高さんが変なんです」 「変じゃない。千秋に対する愛情表現だから」  俺に睨みながら言われても何のその。それがどうしたっていう感じだ。 「だけど一晩で、あんな回数。――っ」 「本当は朝までしたかったんだが。君がもちそうになかったから、一応配慮したんだよ」 「はい――!?」  この人、どんだけ……。呆れて言葉が出なくなっちゃった。 「もっと擦り合って搾り取ったり、アレやコレをしたかったんだが」 「だだだだっ……」 「だだだって、機関銃? 連続で打ち続けてほしかったのかい? そうか中身がっ、ふっ!」  思わず穂高さんの口を手で塞いでしまった。どうしてこの人は、何でもアレに結び付けてしまうんだろう。 「お願いですから、もう俺は無理ですので打ち止めってことで、ヨロシクお願いしたいんですが」  何でこんなことに、息を切らさなきゃならないのやら。心臓がさっきから、バクバクしっぱなしだ。 「分かった、じゃあこうしよう。俺が千秋にマッサージする。疲れた身体を癒してあげよう」 「しなくていいです! 大丈夫ですから」 「職場では、ゴッドハンドと言われているんだよ。上司にしてあげたら、すぐに寝てしまうレベルなんだ」  口に当てている俺の手をぎゅっと握りしめ、善は急げと言わんばかりに、引っ張るように歩き出した。 「いえいえ、結構です!」 「分かった。それなら股間のモノに、ソフトなマッサージを」 「がーっ! 分かりましたよ、普通のマッサージでお願いしますっ」  結局俺には選択権がなく、普通のマッサージをお願いしたのだけれど――

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