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残り火本編第一章 火種20
ダルい身体を持て余しながら寝返りをして、隣にいる穂高さんを見る。紫煙をくゆらせて、どこかぼんやりとしていた。
そんな俺の視線に気がつき、そっと手を伸ばして頭を撫でてくれて。
気持ちよさに瞳を細めたら、何故か唐突に反対の手で布団を捲り、中を覗きこんだのだけれど――
「いきなり、何見てるんですかっ」
「ナニ……」
「やっ、そうじゃなく、何で見るんですかっ」
じっと見られるのがイヤだったから、さっと前を隠す。もう隠す間柄でもないんだけれど、今更って感じ?
穂高さんがあまりにじっと見つめるものだから、恥ずかしくて堪らない……
「千秋って俺と関係もつ以前に、こういうことをしたことがなかったりする?」
何で分かるんだ、そんなの――
「……そういう機会があったんですけど、相手にはぐらかされて、させてもらえなかったんですよ」
「へぇ。相手は年上の人だろ」
さっきからどうして、ぽんぽんと当てていくんだ。……この人、エスパーなのか!?
眉間にシワを寄せて言い淀むと、何故か得意げな顔をした。
「千秋のがキレイだったから、経験が少ないと判断したまでだし、身体が小さくて頼りなさげな感じが、年上の心を掴むタイプだからね」
――俺ってば、そんなに頼りなさげな感じを醸してるのかな。
むぅと考えて小首を傾げたら煙草の火を消し、身体に引っ付いてきた穂高さんの手が、何の前触れもなく俺のを掴んだ。
「わわっ!? 何をするんですかっ、触らないで下さいよ。いきなり」
「ん……。触る」
平然と言いのけて、俺の肩口に額を擦りつけ目を閉じた。
「触ってから、そんなことを言われても困りますっ。離してください」
「触るだけ。何もしない」
ホントかな……。さっきだってマッサージするだけとか言って、ちゃっかりいたしちゃったクセに――
「今までの行動を考えると、触るだけで終わらない気がします。自分のでも触っててください」
掴んでいる穂高さんの手を退けようと手を伸ばしたら、手首を掴まれる。導かれるように引っ張られた先は、穂高さんの――
「なっ、何やらせるんですかっ!?」
「……千秋専用、だよ」
「っ……」
「それとも君は、俺が自分のをひとりで弄ってるトコを、眺めたいと思ってるのかい? 自分のを触ってくださいって、そういうコトだろ」
それはそれは嬉しそうに訊ねてきた。肩口から俺を見る視線が、いろんな意味でいやらしいこと、この上ない。
「……握ってくれ」
「にっ、握るっ!?」
ひぃっと顔を引きつらせたら、大丈夫と小さく呟く。
「さすがの俺も、楽しみ過ぎて疲れてるから。こうやって握ってくれるだけでいい」
二の腕をかぷっと甘咬みして、俺のを緩く握りしめてきた。
握ってやらないと握られているモノに、何かをされてしまう恐れがある。いた仕方ないか――
観念して同じように握りしめると、スイッチがオフになった人形の如く動きが止まり、すーすーと寝息を立てはじめた。
「え……? あの――」
どうしてこの状態で寝られるんだ。下半身に置かれた手が、否応なしに感じられる状態なのに、安心しきって寝ちゃえるなんて信じられない。
――無防備な姿を見せられる間柄だからこそ、なのかな――
無邪気な顔をして口を開け、眠りこける穂高さんの額に、そっとキスをしてあげた。この幸せが、ずっと続きますようにと……
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