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繋がる空6

「色んな世間を見てみるのもいいと思うよ。あきら君はもう少し視野を広げたほうがいいと思う」 世間・・・外に出て何かをするわけじゃない。視野だって狭いかもしれない。 俺より9年先に生まれてるはるは、色んな経験をして、色んな事を知ってる。 世間知らず。そう言われても仕方がないくらいに俺は何も知らないのかもしれない。いや、実際知らない。 飲みにもいかなれば、遊びに出るわけでもない。はるが居なければ外食だってしない。 そんな俺にいつか『面白くない』って飽きるかもしれない。今だって都会に住む人達と俺と比べたら面白味のない奴だって思ってるかも。 実際・・・もう冷め始めてるかもしれない。もうどれくらいはるを抱いてないんだろう。手を伸ばして来ない素っ気ない態度に俺のこともう欲しくなくなったのか?それとも気になる奴が出来たとか? 考えたくなくて見ないようにしていた妄想に、ぞっとした。 そんなの・・・絶対嫌だ。 もっと幅のある魅力を感じてもらえるいい男になりたい。 なんでも知っててなんでもできる男になりたい。 はるがずっと好きでいれくれる余裕のある男になりたいよ。 「行きましょう、内田さん。連れてってください」 そんな返事を待っていなかったのか内田さんがギョッと目を剥いた。 俺の男としての幅を作ってくれる人が運良くそばにいてくれるじゃないか。内田さんなら悪いようにはしない。目が合う内田さんは優しく笑って俺の返事を待ってる。ここは男を上げる幅なんじゃないのか? そう思う先に口をついて言葉が出ていた。 **** 職場を出て内田の後をぞろぞろとついて行く。 車はダメだからと駅へと向かう。 一番後ろからついてくる悠汰は葵に電話をかけて今から行く場所をオブラートに包んで話ている。 赤井さんは渡辺さんにメールを送ると、すぐさま電話がかかってきて嬉しそうに頷きながら返事をし、幸せそうな顔でスマホを鞄にしまった。 俺も一応スマホを確認する。 だけど誰からもなんのメールもない殺風景な画面に綺麗な寝顔のはるが映ってるだけだった。 交友関係にも問題ありだよな。ここにも男の幅がないと肩を落とした。 「あきら君、気が進まないならやめる?」 肩を落としたのを見落とすはずのない内田さんが声をかけてくる。 「行きますよ。幅を作んなきゃなんないんで」 「幅?なんの?」 「男としての幅ですよ。経験がモノを言う幅です」 「またなんだか拗らせてる気もしないでもないけど・・・まあいいか。あきら君の幅とやらを作りに行きますか!」 改札を出た俺達は、ここでも経験がモノを言うというのか幅を作るというか・・・ホームに滑り込んだ初めての沿線の黄色い電車に乗り込んだ。

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