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繋がる空7
「今日はさ、全部忘れて楽しんだらいいよ」
耳元で内田さんが呟いた。
「別にとって食う訳じゃないから、癒してもらいな、ね」
エレベーターが階を知らせて扉が開いた。
雑居ビルの7階、この上はなかったから最上階なんだろう。
キャバクラってもっとギラギラしたイメージだったのに。ギャルっぽい女の子達がキャキャしてるイメージだったのに。
「お待ちしておりました内田様」
背の高いボーイが高価そうなキラキラ光るドアの側に立ち笑顔で出迎えてくれる。
「こんな上品なキャバクラ初めてだわ。会員制じゃねーのここ。さすが内田さん!」
悠汰が嬉しそうに一番乗りで踏み出した。
笑いながら赤井さんはその後をついて行く。
こんなキャバクラって、お前来たことあるのかよ!って心の中でツッコミながら、確かに成人男性なら一度は来たことあるよなって納得した。
俺ははるがいれば他の誰かに癒してもらおうなんて思ったこともなかった。
はるがいれば癒されてたし。
「あの子来てる?」
ボーイに尋ねる声が聞こえてくる。
「来てますよ。病み上がりなので声が掠れてますが」
「良かった。あきら君のファンだって言うから合わせたくて連れて来たんだよ」
「ありがとうございます。早速お席に向かわせますね」
口元のマイクで何やら呟く。
俺のファン。seputoのモデルのファンだって聞いただけで、重い気持ちがモデル仕様になってしまう。
seputoの評判を下げないように看板背負ってるからなのか。作られた自分だからなのか。
俺の中で使い分けをする「seputoのモデルのあきら」にシフトチェンジする。
それもいいかもしれない。素の自分より枠を固められる。鎧を着てない今の俺はダメダメでヘタレな引きこもりだしな。
二枚扉になっている重そうな黒いドアを開けて中へと促す。薄暗い店内にいい香りが鼻を掠めた。
1人の女性がやんわり会釈をすると内田さんの顔を見て微笑んだ。
「お待ちしておりました、内田様。ご案内いたします」
フワフワな絨毯に通路を歩き初めてなんだか違和感を感じた。隣を歩く内田さんにちょっとホッとしたのは初めて来た場所に慣れた彼の気配があったから。
広いフロアをイメージしてたのにそんなのものはどこにもなく、おしゃれな絵画が掛かってある両脇は壁だ。
ってことは個室なんじゃないのか?
そんな事を考え壁ばかり見ていてふと前を見れば悠汰と赤井さんの姿は無く笑顔の女性が立ち止まって振り返っている。
踏み出そうとした瞬間、ポンと肩を叩かれて隣の内田さんを見た。
「少しならお触りOKだから楽しんで」
すり抜けて歩き出した内田さんは颯爽と消えていった。
ここってキャバクラって感じじゃないよな。来たことのない俺でもわかる。1人1人にあてがわれる女性と2人っきり・・・
女性が立ち止まった所に辿りつけば差し出された指先で俺はここに入るんだってわかる。
これって・・・いんだろうか。浮気とかになんないの?
ゆっくり開かれた扉の中は4人は座れそうなソファがあって、栗色の長い髪をゆるく巻いたスレンダーな女性が立っていて俺に笑顔で会釈する。
その顔を見て心臓が止まるほど驚いたんだ。
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