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繋がる空9

「私があきらさんのお付き合いされてる方に似てるって聞いて。似てますか?」 揺れる巻いた髪が胸元に落ちる。そっと重ねられた手の冷たさが、はるを思い出させる。よくこうやって手を取って話を聴いてくれた。 「似てますよ。ほんとそっくり。びっくりしました」 「少しお聞きしたんです。あまり会えないとか。今日はお付き合いされてる方だと思って甘えてくださいね」 俺の体温で暖かくなる手をもう片方の手で包み込む。 彼女から香る香水がやけに甘く感じた。 「なんて呼ばれてたんですか?」 「はるって・・・」 「じゃ今から私のことはるって呼んでください。あきらさんは?なんて呼ばれてました?」 「あき・・・」 「あき?どうしたの?とっても辛そう・・・」 その口調にハッとする。彼女の口調がそっくりすぎて。 彼女にしてみたらなんてことない、名前を呼んだだけ。 なのにはるが呼んでくれたようドキッとして胸に込み上げるものをぐっと堪えた。 この空間がそうさせてるんだろう。そう思うことにする。どうせここを出れば会うことさえない。

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