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繋がる空10
じっと見つめてくれる視線ははるを思わす。
目の下にホクロがあることにはるじゃないんだって落胆する。
「惑わされるな」
頭に浮かんだこの言葉にハッとする。
はるがこの事を知ったら悲しむと思う。寂しくて他の誰かに縋るなんて、俺がはるなら許せないと思う。
はるが誰かに抱きしめられて癒されてるなんて絶対に嫌だ。
はるを求めることが出来ない今、こんな風に誰かに癒されるなんてことしてはいけない。
まして来ているメンツは悠汰と赤井さん、内田さんだ。どこからバレるなんてことは安易に想像できた。
握りしめた手を解いて彼女の頬を撫でた。
「君に癒しを求めるのは違うと思うんだよ。これを知ったらはるは悲しむ。それだけ俺のことを思ってくれてる。なのに寂しいと誰かに縋るのは違うと思うんだ。君ははるによく似てて、一瞬でも絆されそうになった。だけど俺が抱きしめるのははるだけだから。君に癒してはもらえない」
「あきらさんは真面目な方ですね」
ふわっと抱きしめられて柔らかい髪が頬を擽ぐる。
「黙っていれば分かりませんよ。ここにいるのは私とあきらさんだけです。言いたいこと・・・愚痴でも嫌味でも聞きますから。そんな辛そうにはるさんを守るあきらさんは痛々しいです。吐き出しちゃったらどうですか?それが癒しになりませんか?」
カウンセラーのようになんでも聞いてやるっていう彼女はここで働くキャバ嬢・・・いや、違うな、キャストなんだから。
こんな風に客を抱きしめて言い訳がない。
本来なら楽しくお酒を飲む場所じゃないか。
「君の仕事を全うしてくれればいいよ。なんだかはるにそっくりで甘えてしまった見たい。申し訳ない」
彼女の身体をゆっくり引き離して笑顔を作って見せた。
「私の方こそごめんなさい。公私混同もいいとこでした。ずっと憧れて好きだったので舞い上がってしまって・・・ごめんなさい」
薄っすら涙を浮かべ拭う姿がまたはるとダブって見えた。
「本当によく似てる。涙の拭き方まで」
ふふっと微笑んで溜息隠すように作ってくれた酒を口にした。
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