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繋がる空11
彼女は思い出話を聞きたがってお酒の勢いも借り、思い出せば溢れてくるあの頃の想いと、今の想い。
幼くて悪気なく傷付けたことさえ黙って聞いてくれた。
終わったことなのに辛かった思い出なのに逃げた俺を何度も追いかけて最後まで諦めないでくれた思い出達が走馬灯のように駆け巡った。
終始優しく見守るように微笑んでいた彼女はやっぱりはるじゃなく、当たり前だけど、ひんやりした手で握り締めてずっと聞いていてくれた。
本当ならもっと気の利いた話やら笑わせる話をして盛り上げるんだろうけど、そんな手慣れた会話なんてでてこない。
当初の目標にしていた男としての・・・なんて程遠かった。
でも、はるに似た顔を見ながらはるを想い、話せたことで少しは思い詰めていた気持ちが軽くなった気がした。
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「気が済んだ?」
スタッフルームで着替えてる最中、ノックもせずに入ってきて、聞いてくるのは呆れた問いかけ。
「気が済みました。ありがとうございました」
いつもと立場が逆転したその返事に内田さんは笑った。
「素直に行けばいいじゃん。あきら君だって喜ぶと思うよ」
長い髪のウイッグを後ろに引っ張って一気に外すし、綺麗に施されたメイクを落としていく。
淡々と着替えていく俺を苦笑しながらながめてる。
「君達は時々色々拗らせちゃうよね。お互い気持ち悪いくらい好き合ってるのに、こんなことをして確かめ合わなくてもいんじゃないの?」
好きだから愛しているから確かめたい。いや確かめているだけじゃない。触って抱きしめて肌で感じたかった。
こうやって離れてあきらが何を思って暮らしているのか。俺のことちゃんと気持ち変わらず好きでいてくれているのかを。
だけど離れた分だけ、増していくのは戸惑い。
俺の夢のために俺のために、離れた距離と時間が戸惑いを生んでいく。
どう触れていいのかさえわからなくなった。
触れただけで弾かれそうな感覚が怖くて抱きしめることさえ出来なくなった。
声を聞けば会いたくなる。抱き締めれば離したくなくなる。そんな事を繰り返し考えているうちに実物のあきらを見た時、手を伸ばせなくなっていた。
どう接していいのか、カマでもかけないと確かめられないくらいに拗らせてしまった。
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