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繋がる空21

数日後、北岡と昼食が一緒になったときのことだった。 「オーナーってゲイですよね」 歯に絹着せぬ物言いとまっすぐ見つめる目。わざわざ真正面に座った理由はそれか。いつも俺に構って見すかすような目は怖さを感じてた。 「い、いきなり何?」 バクバクとうるさく打つ心臓。不意打ちを突かれて悟られないように平静を装った。 「なんでそう思うの?」 質問を質問で返すのはどうかと思うけど少しの時間が欲しい。言葉を探す時間が。 「隠したってダメですよ。俺と同じ匂いがするんで」 根拠のない話をあたかも当たっているだろうと自信げに言う。 同種の匂い。確かに相手を探していた時には感じたことがあった。 ずっと昔。あきと会うずっと前。今はちゃんと消化した思い出の中の出来事。 そんな俺の頭に浮かんだことは『あきとの関係をバラしたくない』だった。 こんなに好きで愛おしいあきらを仕事関係の人間に晒したくない。 そんなことは建前で心のどこかで隠したいと思ったんだ。ここのみんなには絶対に隠しておきたい北岡には特にと咄嗟に思った。 後から後から湧いてくる罪悪感と後ろめたさが襲ってきて、知るはずもないあきらの声さえ怖くて聞けなくなってしまった。 毎日のメールの囁くような『愛してる』の文字でさえまともに見れなくなっていた。 ただ確信もないことを言われただけで同様して、あきらの存在を隠してしまった俺は、ここから動けなくなって帰る術を自ら絶ってしまった。 冗談だったかもしれない些細な問いかけを嘘を嘘で上書きしていく。 重ねた嘘を塗り固めたその頃にはもう、あきの存在さえないもののようにしてしまっていた。

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