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繋がる空22
嗚咽で詰まる言葉を何も言わず黙って背中を撫でてくれる。
でも流れる涙は拭ってはくれない。
俺が何を思って暮らしていたか幻滅したに違いない。
だけど、あきに話してしまいたかった。もう嘘を塗って塗って固めてしまったことの罪悪感で壊れてしまいそうだったんだ。
あきを想って生きてる。
ずっと出会ってからそうだった。毎日毎日愛して止まなかった。
なのに、俺は離れればこうやってあきを隠して嘘を上書きしてあきを想って暮らしていた。
見栄や体裁、嫌な大人の代名詞なのに。
そんな自分に吐き気がする。
懺悔のようにあきに話して吐き出そうとしてる俺にも。
何も言わない。
呆れて言葉も出ないのかも知れない。
どうしようもなくなって、他人になりすましあきに近寄るしか出来なかった。
恋人は男であることを知られたくないと偽ったことを咎められてもおかしくないんだから。
「あき・・・」
最後まで話してしまうのが怖い。でも吐き出したい。
嗚咽を殺せば大きく深呼吸を体が求めて意識とは別に痙攣を起こす。
「ゆっくりでいいからその先を話して」
気遣う言葉なのに冷たく聞こえる。それは俺が後ろめたいからなのか疚しく思ってるからなのか。
どちらにしてもあきにはいい話じゃないんだから仕方ないんだけど。
締め付けられるように胸が痛んだ。
日に日にエスカレートしていく北岡の行動には目に余るものがあった。
仕事が終われば何かと理由をつけて俺のアパートに来ようとする。
それをやんわり断れば、跡を付けて来ていたんだろう、いつのまにかどこに住んでるのか知っていいて、押しかけてくるようになった。
あきさえ知らないあの部屋に誰も入れたことはなかったのに。
元々備え付けのものばかりだから俺の私物なんてたかが知れてる。
だけど唯一力が抜けるあの部屋には誰も入れたくなかった。
なのに、何度目かに現れた時、酷く酔った北岡は俺を押しのけるようにずかずかと俺の領域に足を踏み入れた。
ただ寝るだけのベッドに腰掛け高揚した顔で見回し
「殺風景な部屋ですね。似合わないなぁ」
どんなイメージで俺を見ているのか知らないが苛立つその表情にプライベートを土足で踏み込まれた俺は北岡に怒鳴った。
「北岡君、帰れ!」
不敵な笑みを浮かべて笑う奴が言い放つ。
「何言ってんですか?仕事ばかりじゃ疲れてるだろうと思って癒しに来てやったのに」
敬語もなく勢いよく俺の手を引いた。
よろけた俺は北岡を交わそうとベッドに飛び込む形になってしまった。そんな俺を舐めるように見た。
「積極的ですね。オーナー・・いや、はるさん。乗り気でよかった」
何を勘違いしたのか手首を押さえつけ俺に覆い被さってきたんだ。
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