23 / 24

繋がる空23

「こんなことをしてタダで済むと思うなよ!」 もしこのまま襲われでもしたら間違いなくクビにする。これは合意じゃないレイプなんだから。 そんなことを思いながら焦りと苛立ちと情けなさが押し寄せてくる。 「困ったな。会いにこない恋人に代わって癒してあげようと思ったのに」 掴んだ手を緩めて身体を起こした隙に床へと滑り降りた。 「首にされちゃ困るんで。あの店気に入ってるし」 ベッドに座れば床に座った俺を見下ろす。その視線は俺の隣にあるテーブルに移った。 「へぇ。イケメンですね。はるさんの彼」 テーブルの上に飾った結婚式の時の写真を見てニヤついた。 パタンとフレームを倒して睨み返すと北岡は左右に首を振って首をすくめた。 「いいじゃないですか、恋人が男でも。それに遊べる相手がいるっていいと思いますよ。俺と遊びましょ。はるさんのこと結構前からいいと思ってたんですよね」 ポケットからタバコを取り出して吸っていいかと律儀に合図をしてくる。 ダメだと首を振れば肩をすくめてポケットに戻した。 「プライベートなことは公言しない主義なんだ。だから詮索するなら俺にも考えがある」 そう言えば、ベッドから降りて俺の前にペタンと座りあぐらをかいた。 「俺ははるさんと遊びたいなぁ。それにもうプライベートなこと知っちゃったし?俺に口止めしなくていいの?」 ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべる。 「言いたきゃ言えばいいさ」 「言わないですよ。はるさんと俺の秘密だし。共有できるものがあるのはいいですよね」 立ち上がった北岡が倒したフレームを起こし、興味なさそうに横目で見て俺を見下ろす。その顔は天井のライトから照らされて恐ろしいほどの黒い影が見えた。 「俺は欲しいものは手に入れたいタチなんで。よろしくね、はるさん」

ともだちにシェアしよう!