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第3話

「…君は、どうするんだ?」 黙々と手を動かしながらそう尋ねた東吾に、彼の手の動きに合わせて、気だるげに身体を起こしながら哲生が答えた。 「俺?俺はここに残るよ。地元の大学に行って、地元の会社に就職して、結婚して子育てする。凡人の俺の人生なんて、そんなもんだよ。お前は、将来官僚になんのか?それとも大企業のエリートサラリーマンか?」 哲生のからかうような口ぶりに東吾は少し嫌そうな顔をしたが、黙って哲生の身体を拭いた。 色白で、毛のほとんど生えていないほっそりした脚を拭き、ベッドのヘッドボードに寄りかかるように座った哲生の片脚の膝を立たせると、股間に手を這わせ、優しく丁寧に拭いた。 一緒にシャワーをあびようと以前何度か誘ったが、哲生の両親の気配が濃厚に残る浴室を、哲生と秘密の行為をしたあとで使うことは出来ない、と東吾が頑なに拒んだ。代わりにいつも、哲生の身体を隅々まで綺麗に拭いてくれる。これはこれで、東吾の好きなプレイなのだと解釈し、今では哲生も黙って受け入れている。

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