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第5話

あの日以来、東吾は機嫌を損ねたのか、学校でもほとんど顔を合わさず、携帯にメールしても返事をして来ない。 哲生にしてみれば、お互い受験のストレスを発散する丁度いい相手と割り切っていたのに、一方的に関係を切られて困惑したし、怒りたいのは自分の方だった。 フワフワした巻毛と長い睫毛、大きくて茶色い瞳、幾分ぽってりした紅い唇、細くて高い鼻筋がノーブルな印象を与える容貌に、背は標準値だが長い手足をもつ哲生は、勉強や運動こそ特に秀でたものは無かったが、性格も明るく優しかったので、子供の頃から王子と呼ばれて、よくモテた。しかし、なぜか自分から女の子を好きになったことはほとんどなかった。女の子を抱きしめて身体の柔らかさや温もりを感じるのは好きだが、心までは求めていないので、明日抱きしめるのが別の子でも構わない。 イケメンの哲生と付き合えることを素直に喜び、身も心も深く繋がりたがる彼女たちには悪いが、哲生は常にあっさりした関係を望んでいたので、1人の子と長続きすることはなかった。

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