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第6話
東吾は高校に入学した時から、有名人だった。
入学式で、入試の成績がトップだった者が務める新入生代表の宣誓を、東吾が行った。東吾はそのまま卒業まで、トップの座を譲ることはなかった。部活はハンドボール部で、練習や試合に勉強以上に熱心に取り組み、二年の秋に当然のようにキャプテンに選ばれた。
髪を短く刈り上げ、浅黒い肌に彫りの深い顔立ち、長身で骨太な身体に、真面目でストイックな性格がマッチして孤高の武士のような雰囲気を醸し出していて、ちょっとちゃら目の哲生とはタイプの違うイケメンとして、哲生のファンとはまた別の女の子たちのハートを捉えていた。
だが、哲生が何人もの女の子達と浮名を流していたのとは対照的に、東吾は群がってくる女の子達の誰とも付き合ったことはなかった。告白して断られた子の中には、学年一の美人もいた。部活と勉強以外のことに割く時間はない、というのが理由だとみんなが驚いてウワサしていた。
哲生が視線に気付いたのは、二年生の夏休みが終わった頃だった。
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