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第10話

その日の放課後、哲生は東吾を理科棟の空き教室に呼び出した。 「佐倉、何か用か?」 教卓にもたれかかりながら東吾が聞いた。 「お前こそ、俺になんか用があるんじゃないか?」 「なんで?」 「なんでって…」 哲生は言葉に詰まった。 ここ最近の東吾の行動がどうにも気になり、今日の体育の授業での出来事を決定打に東吾を問い詰めようと勇んで呼び出してみたものの、いざ、本人を目の前にすると自分が確信したと思ったものが、いかにもバカバカしく、あり得ないことにしか思えなくなった。 (オレノコト、スキナンジャネ?) 東吾は、赤くなって黙り込んだ哲生をしばらくじっと見つめていたが、フッと微笑むと手招きした。糸に引かれるように近寄ってきた哲生の頬に手を当てた。 「俺に、いやらしく触られて感じた?」 「なっ…⁉︎」 予想外の問いかけにまたも言葉に詰まった哲生の顎をグッと掴むと東吾は言った。 「正解だよ、佐倉。君に言いたいことがある」 「何…?」 「好きだ」 三度驚き、立ち尽くしている哲生のポカンと空いた唇に、東吾はゆっくりと自分の唇を重ねた。

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