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第11話
自分はゲイなのだと東吾は言った。突然キスされ、驚いて逃げることも忘れている哲生を抱きしめ、耳元で息を吹きかけながら甘く囁き、東吾は哲生を口説きにかかった。
曰く、女の子に欲情したことは一度もない。初恋の人は、中学時代に自分のクラスに教育実習に来た男子大学生。哲生のことは、入学した時から好みのタイプだと思っていた。哲生の持つ雰囲気からゲイだと確信していたのに、女の子と付き合い始めて驚いた。見込み違いかと思ったが、彼女たちとの付き合いは長続きしない。次々と相手を変えるが、満足しているように見えない。やっぱり哲生はゲイなんだと改めて思い、二股かけて彼女と別れフリーになったところで、試しに思わせぶりに触って見たのだと。
「いや、いや、いや」
哲生は身体をよじって東吾の腕から逃れると、明らかに動揺したまま首を振り、唇を手の甲でゴシゴシと拭った。
「俺、自分をゲイだと思ったことは一度もないし」
「自分の知らないドアが開くかもよ」
「いや…」
東吾は、再び哲生の腰に腕を回した。
「こうされるの嫌じゃないだろ?俺がジッと見てても、体育のとき触ったときも、君、全然嫌そうじゃなかった」
確かに、黒い髪に浅黒い肌、彫りの深いエキゾチックなハンサムである東吾の黒い瞳に見つめられながら、低くて心地よい声を聞いていると、哲生の中で何かが麻痺してきたようだ。
「佐倉、嫌なら嫌だと言って」
顔を近づけながら東吾が言った。
唇が触れそうになる。またキスされると思ったが、哲生は顔を背けたりせず、そのまま目をつぶってしまった。
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