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第18話
「山岸、市役所に行って資料もらってきて。ついでに県庁にも行って来て」
意見が出尽くしたところで、事務所の代表の建築士に言われた。コンペに参加することを前向きに考えることにしたようだ。
「はい!」
哲生は張り切って明るい声を出した。
自分の席に戻って携帯のメールをチェックすると、妻の茉莉子から着信があった。今日は残業で遅くなるとのことだった。
「また残業か。最近多いな」
ため息まじりにつぶやいた哲生の独り言を耳聡く聞きつけた、結婚10年、子供2人の先輩がニヤニヤして近寄ってきた。
「何、山岸クン、もう倦怠期?」
「違いますよ。俺らまだ子供もいないし、お互いバリバリ仕事してるんです」
「奥さんも建築関係だっけ?」
「ええ、彼女はハウスメーカーのインテリアデザイナーですけど」
「いいよな、2人で稼いで。将来安泰だな」
パソコンにデータを打ち込みながら2人の話を背中で聞いていたアルバイトの女子大生が、椅子をくるりと回してこちらを向いた。
「山岸さんって今26歳ですよね。結婚されたの24歳ですか?出来ちゃった婚でもないのに、早くないですか?結婚」
「そう?早いかな?」
哲生は、茉莉子に了解の返信をピコピコ携帯に打ち込みながら、空いている手で顎を撫でた。
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