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第21話

ファミレスで、仲良さげに話す恋人たちを茉莉子は退屈そうに眺めていたが、デザートに頼んだクリームあんみつの最後の一口を頬張ると、哲生に顔を向け小声で言った。 「この2人、ほっといても大丈夫よ。帰りましょう」 化粧の薄い生真面目そうな顔立ちなのに、ペロリと舌を出して肩をすくめた様子が思いがけず可愛らしくて、哲生もつられて微笑んだ。 2人は間もなく付き合い始めたが、セックスはすぐにはしなかった。茉莉子はそっち方面には淡白な方らしかったし、哲生も茉莉子相手だと、軽々に手を出す気にならなかった。 ヒールの高い靴を履くと、男子として決して小柄な方ではない哲生と並んでしまうくらい背が高く、痩せてはいるが、テニス部に所属しているせいか茉莉子の筋肉質な身体は、女子というより少年のようだった。抱き寄せてキスをするといつも少し震え、淡白というより生真面目ゆえの奥手な性格がうかがえた。 茉莉子と付き合い始めて、哲生は今までとは違う思いを抱いた。真面目な茉莉子と未来を真面目に考えたくなった。高校を卒業した時のような、ちゃんと考えなかったばっかりに経験したつらい別れを、茉莉子とするのはイヤだった。哲生は女の子相手に初めて、心を通わせたいと思った。

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