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第27話
ようやく、東吾が自分のモノを哲生の後ろに当てた。ゆっくりと優しく哲生の中に入っていく。久しぶりの感覚に、哲生の口から長いため息が漏れた。東吾に後ろから抱きかかえられ、自分のモノを掴まれて、奥深くまで突き上げられると同時に強く扱かれて、哲生は意識が遠のくほど感じてしまった。
長い間忘れていた快感に身を委ね、哲生は東吾の腕の中で、何度となく昇りつめた。
東吾の胸に抱かれて、心地よい疲労感にうつらうつらしながら、哲生はちょっとした違和感を感じていた。
昔と同じように優しく大切に抱かれた。何度もキスされ、抱きしめられた。
だが、東吾は一度も名前を呼ばなかった。「佐倉」とも、「哲生」とも。
「黒川」
「何?」
「なんで何も言わないんだ」
「何にもって?」
「俺の名前を…」
東吾は、口ごもる哲生をしばらく黙って見つめていた。
「…佐倉、いや、山岸か」
ハッと顔を上げた哲生の額に唇を押し付けながら、東吾は言った。
「…呼びにくい」
腕枕を解き、東吾は哲生を1人ベッドに残してシャワー室に消えた。
哲生は東吾のいなくなったベッドの上で、膝を抱えて涙をこぼした。
もう、東吾が自分を抱くことは無いのだと悟った。
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