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二十七話『何一つ変わりはしない』
「お前オナニーしないって事はどうやって処理してんの?チンコ弄らないならどこ弄って処理してんの?」
返事を期待できそうもない問いかけを半田は続ける。
「もしかして『それ用』の使用人が居んの?」
目を瞑り、泣き疲れた子供の様な顔で松尾の愛撫に感じていた朝比奈が薄く目を開ける。
頬が桃色に染まり不思議そうに目を彷徨わせる。
夢から覚め現実から置き去りにされた表情が、厭らしい事をされているのに、驚くほど無垢で清らかに見えた。
「なに‥?」
徐々に現実に呼び戻され、困惑が入り混じる。
―――現実逃避をしても、何一つ変わりはしないのに。
「だから、乳首でしてんの?それとも尻つかってんの?」
「…は?」
「おい、何飛んでんだ。大丈夫かお前。一人エッチどうやってるのって話だよ。」
体を押さえつけられて、あらぬ場所を松尾に弄られて死にそうな顔をしていた朝比奈の顔に怒りが漲る。
「日替わりでやりまくってるとか」
馬鹿がっと朝比奈が低く吐き捨てる。
掠れて苦しそうな声だ。
「半田、折角朝比奈が集中してくれてんのに変な刺激与えんな。気が散るだろうが。」
集中と言うより現実逃避、または衝撃を受け続け放心していたに近い。
頭を殴られ半分気を失っていたようなものだ。
松尾が無言だったのは朝比奈が我に返らないようにする為だったが――残念ながら――時すでに遅し。
大人しく感じていた朝比奈さまは目を覚まし「これではいけない」と我に帰ってしまった。
「変態共、もう満足しただろうが。放せ。」
「これで満足ってお前まじで言ってんの?まだ何もしてねぇだろうが。」
「…人の体を勝手に弄りまわしておきながら何だそれは!?何様だお前。」
興奮状態の半田や松尾は聞き流しているが、相川からすれば朝比奈にだけは「何様だ」と言われたくない。
勿論、麗しすぎる容姿なので反感こそ抱かないが思わずツッコミを入れたくなる。
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