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九話『信用が無いようで何より』

こうしてまずは朝比奈 錦を呼び出すことに成功する。 そして、次は一之瀬 彪彦だが彼はもっと簡単だった。 彼が所属する風紀生活委員は生徒の服装や持ち物、素行、生活規律をチェックし正す仕事だ。 裏を返せば、立場と権力を利用し、仲の良い友人や好意を抱いている相手、または気に入らない同級生などを前にした時に、私情を優先し公正な判断に欠ける指導をする輩も皆無とは言い切れない。 最悪、暴力的な取り締まりに発展したことも有る。 だから基本的に風紀生活委員は、背負う責任に対する誠実さの有無を関係なく立場上監査対象となっているのだ。 都合よく一之瀬の熱狂的なファンである後輩君が、一部問題のある生徒たちを指導する際 血の飢えた狂犬の様に威嚇していると最近は一部生徒に恐れられていた。 『――所謂監査対象になっていた風紀の一年生一匹確保しました!!』 その一言で舌打ちし、綺麗な顔を実に凶悪にゆがめ呼び出しに応じてくれた。 心当りが多すぎて、疑う余地も無かったようだ。 チョロすぎる。 朝比奈先輩の弟君に、一之瀬先輩の後輩君。 信用が無いようで何より。 実に好都合。こうして同時二人を呼び出せ眼福にあずかる幸運に恵まれたのだ。 心からお礼を言うよ。

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