『問題は？』 ――え？あぁ 少しだけ見惚れ、言葉を続けるのを忘れた。 ――…問題は正式な手順を踏まずに一部部活動の経費申請を通したり、 遠征費用清算の不正申請受理などの疑いです。 部活動の件は内部通告もあり、俺らの間では噂になってるんですよ。 何方にせよきちんとした証拠もないし、今の所「疑い」なので表沙汰にはなってませんがね。 『要するに公正であるべき立場の人間が私情を優先し、一部部活動部員との癒着、 粉飾決算と思える会計処理及び生徒会費の横領着服といった使い込みを疑われていると言う事か。 癒着に関してだがアレにそこまで親しい友人がいるとは思えないが…』 ―――脅迫または更紗君に対する嫌がらせの可能性もゼロではありません。 内部通告者の話も併せて事実確認を急ぎますよ。 …ただ、俺はかなり黒に近いと思ってる。 『定期監査で不正経理の疑惑が出た時点で――本人を呼び出し直接聞けば良いものを…何を躊躇っている。』 ―――いやいや、まだ疑惑にすぎませんのでそこまでは流石に。 『疑惑が有る時点で問題がある。』 ――厳しいなぁ。 『問題が有るならば説明責任が生じる。疑惑が事実ならば処罰を受けねばならない。 潔白であれば、それを証明する義務がある。彼はそういう立場だ。 疑わしい証言をしたならば吊るし上げるなりして聞き出せ。』 吊し上げと来たか。 厳格な性格は周知の事実ではあるが、溺愛している弟が相手でも情け容赦無しときた。 素晴らしい。 同じ監査委員の仁科お気に入りなだけは有る。 ―――噂通り、厳しい方っすねー。てっきり、俺半殺しの覚悟で来たんですけど…。 『火の無い所に煙は立たない。もしも潔白であっても、疑惑を生み出す弟にも非はある。 違うか？』 ―――ははは。それで申し訳無いとは思ってるんですが、お兄様の錦先輩から何点か話を聞きたいんです。 協力していただけませんか。 『――良いだろう。』 弟さん、意外に信用無いなぁ。 そして朝比奈先輩、あんたチョロ過ぎる。 弟の不正経理疑惑？ 勿論嘘に決まっている。