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十四話『カスは幾ら集まってもカスだ』
「いってぇぇええ」
「痛いのは…俺も同じだ石頭め。」
朝比奈が眉間に皺をよせ眼球をくるりと動かす。
「この状況は何だ。」
頭突きした額が痛むのか、寝起きだからか目が潤んでいる。
その視線にぐっと来た。
「……リンチと言う奴か。」
「いや、リンチって…朝比奈にそんな酷い事するはずないだろ?なぁ?半田。」
酷い事と言えば別の意味で酷い事なので正解だ。
「では何故俺はお前達に押さえつけられているんだ。」
「そりゃぁ、お前が暴れたら困るじゃん?」
半田がヘラりと笑い、朝比奈の顔を覗き込む。
「それが、この状況か。一人では何も出来ない低能らしい判断だ。 しかし残念ながらカスは幾ら集まってもカスだ。」
「この状況で最高だねお前。」
「――評価は不要だ。言い訳があるなら聞いてやる。まずはその手を離せ。」
流石朝比奈様。
この状況でも、怯えを欠片も見せず無意識だろう挑発までやってのける。
こんな馬鹿な真似、きっと彼にしかできない。
如何いう思考回路をしているのかと疑問に思ったが、恐らくこの自信に満ち溢れた 強気な姿勢は彼のこれまでの人生における軌跡のなせる代物だ。
――容姿に家柄、学歴に名誉。
多くの人間が喉から手が出るほど欲しても、死ぬまでに得られるものは精々一つか二つ。
朝比奈はその全てを生まれ乍ら持っている。
特に彼の家柄―― 天下の朝比奈財閥に生まれれば自ずと権力や地位、富もついてくる。
人生のスタート地点からして、相川たちとは天と地程の圧倒的な格差が生じている。
彼はこの世に生を受けた瞬間から、他の人間とは違う高みに居るのだ。
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