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十六話『徒労に終わる』
「…おいっ」
「良い匂いがするな…触り心地も良いし。」
頭の上で半田が腕を抑えつけ、松尾が無防備に晒された脇腹を撫でながら肌や髪の香りを吸い込む。
「やべぇ、何かつけてる?」
「馬鹿なだけでなく気持ちの悪い男だな。くすぐったい。」
腰から脇をゆるゆると撫でる。
朝比奈は腰を捩じり覆い被さる松尾から逃れようと試みるが、事態が好転する事はなく徒労に終わる。
「お前弱いところ多いな。」
「俺に弱い所なんてないっ。耳元でしゃべるな気持ち悪い…っ」
磔状態の腕と押さえつけられた体では、もがいても抵抗と言えるような抵抗にはならない。
寧ろ、支配欲を増長させる仕草だと本人は気が付かないらしい。
明らかに松尾も半田も興奮していた。
「結構、感度良いね。乳首たってるの分かる?」
腰を撫でていた手は、腹から胸元へと這い上がる。
女にするように、広げた手のひらで優しく円を描く。
「あっ…」
シャツごと胸の尖りを摘まんで優しく引っ張ると大きく体が跳ねる。
足を割り開き覆いかぶさる松尾がいやらしく笑いながらシャツ越しに爪先を突き立て、 強弱を付け乍ら胸を捏ねる。朝比奈の顔が嫌悪に歪んだ。
「ほら、固くなった。ぷっくりしてきたの分かる?」
「‥っ止せっまてっ、何故こうなる?可笑しいお前は変だっ。嫌だ止めろ気色が悪い触るな汚物。 最近のリンチとは、口封じを込めてこういう事をするのか。」
「………お前どういうの想像してんの?ちょっと言ってみ?」
「単細胞が単細胞らしく殴ってくるのかと考えていたが、 予想以上にお前達が陰湿だったと言う事に多少驚いている。」
「この状況でそれだけ偉そうにできる朝比奈の方が可笑しいよ。」
「俺は可笑しくない。むしろ、嫌がらせにここまでするお前たちの方が可笑しい。」
「嫌がらせねぇ。」
口をゆがめた松尾に、朝比奈は鼻を鳴らす。
「白々しい…。性的な嫌がらせは口封じがしやすいと考えた結果がこれなんだろうが。 頭が悪いくせに悪知恵が働くとは、死んだほうが良い類の害虫だな。」
「何だよ、カリカリして。生理?それとも欲求不満?」
半田が押さえつけていた朝比奈の指先に盛り上った股間をこすり付ける。
本当は握らせたいところだが、今の状態で実行すれば潰されかねない。
「おい、害虫。俺の手に汚物を押し付けるな」
「害虫なんて名前じゃねぇもん。」
優位に立てば、いくら罵られようと怒りは湧かず寧ろ楽しめるようだ。
「半田。その手を離せ。」
「わぁい、朝比奈クンに名前覚えて貰ってラッキー。ところでオナニーしたことある?うつ伏せでするの? 仰向けでするの?」
「死ね汚物っ」
「松尾…朝比奈クンは死ぬほどハードなセックスをしてほしいらしい。」
「えー?おれソフトなセックスを長時間する方が好きなんだけど。所でお前処女?」
不本意ではあるが嫌がらせ程度だと高をくくっていた朝比奈が、セックスと言う単語が出た途端に動揺しはじめた。
流石の彼も、状況がどんどん悪い方向へ転がり落ちている事に焦りを感じた様だ。
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