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十七話『人を怒らせる天才』

「――同性の同級生相手に性欲処理をするつもりか?動物だな。」 危険地帯に踏み込んでいることは理解できている筈なのに。 相手の機嫌取りなど当然するはずは無く、さらに自らの首を絞める有様だ。 言葉巧みに相手を従わせる事くらいは朝飯前のようにも思えたが、 意外にも要領が悪い所が有るのかもしれない。 「いや、まてよ。動物の発情期は繁殖期のみで、目的は子孫を残す事だ。 性的欲求を満たす為に見境なく配偶行動には及ばない。つまりは欲望のまま働くお前たちは動物以下だ。」 「乳首たたせて何言ってんだお前。あ?股座も濡れてんじゃねぇのか?」 「頭の悪い家畜以下のお前には理解できないのかもしれないが、接触による肉体的生理的反応だ。 お前の下半身もそれを証明して、っ‥やっ」 「え?何?松尾君のおちんちん、動物並みに大きくて素敵って?硬いおちんちんで早く苛めてくださいってか。」 「だっ‥誰がそんな事を言った。頭だけでなく耳も悪いのか。嫌だ触るな。」 朝比奈の腰を掴み指摘通り盛上がった下半身を擦り付け、性交の動きを真似て緩やかに尻を振る。 「っ…何して…やめ」 「うわっ、松尾エロ。ほらほら、朝比奈も腰振れよ。」 「何故この状況でそんなに反応しているんだ。何がお前をそうさせているんだ理解できない。」 「そんなに、って松尾先輩どんだけデカくしてんすか。」 朝比奈でも赤面して慌てる事が有るのだな。 相川は応接机に散らかる菓子に手を伸ばす。 バター風味のポップコーンを頬張りながら、特等席で朝比奈の痴態を眺める。 「そう興奮するなよ。直ぐに生で拝ませてやるからな。」 「救いようのない程下種な男だなっ吐き気がする。」 「直ぐにおちんちん大好きってハート付きで言いたくなるぜ。犬みたいに犯してやるよ。」 「猿どもめ。」 「わーい、家畜以下から、お猿さんに昇格したね。うれしいなー」 などと半田は笑う。 しかし、眼は笑っていない。 「猿同士で仲良くしてろ、俺を巻きこむな。退けろ。 おいっ、触るな、止めろとさっきから言っている。 撫でるな馬鹿触るな馬鹿摘まむな馬鹿っお前の事を言ってるんだ松尾の馬鹿」 ――いや、馬鹿はあんただろ。 何故この人は火に油を注ぐ様な事をするのだろう。 薄々感じてはいたが人を怒らせる天才なのかもしれない。 「松尾、俺良い事思いついたわ。」 どうせ碌な事ではないだろう。 「錦 恋ちゃんのあれやろうぜ。」 「まじかよ。受けるわ。――相川。」 菓子を頬張りながら返事をすれば、松尾が歯を剥いて笑う。 「鋏よこせ」 朝比奈の顔が僅かに強張る。 先輩、御気の毒様。 泣き叫んで俺達を楽しませてね。 相川は腰を上げ、机の引き出しから鋏を探し当て松尾に手渡した。

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