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第2話

 ふわりとしたグレーの髪と、宝石のような青い瞳。キメ細かな肌を持ち、唇は薄いピンク色である。目鼻立ちも整っているし、そのままでいれば十分美しいと判断される容姿だった。  だがゼクスにはひとつだけ致命的な欠点があった。それが顔を斜めに横切っている傷だ。 「あー、この傷ですよね。なんか知らないけど、物心つく前からあったんですよ。怪我をした覚えはないから、生まれつきだと思いますけど。でもペットショップで売られる立場としては、これはかなりのハンディキャップですよねぇ、ハハハ……」  そう笑い飛ばしてみせたが、表面上の明るさとは裏腹に、ゼクスの内心は複雑だった。  ――まあ、この兎ちゃん可愛いわね。あなた、この子にしない?  ――なるほど、確かに可愛いが……五〇万か。ちょっと高いな。  ――それはそうだけど……あら? このワンちゃん、安いわね。  ――本当だ、十万もしないな。こいつにするか?  ――そうねぇ……って、この子顔に傷があるじゃない!  ――それもそうか。傷さえなければ成人でもいいかと思ったんだが。  ――いくら安くても、こんな傷物の犬はいらないわね。  結局その若夫婦は、最初に目をつけた兎の亜人間を連れて帰った。 (やっぱり、こんな傷があっちゃ売れないんだよな……)  結局ゼクスは最後まで売れ残り、生まれ育った店から追い出されてしまった。今度は大都会の高級ペットショップではなく、非合法の闇市で売りに出されることになったのだ。 (でも……)  笑顔を貼り付けながら、ふと思う。  ペットにするなら種類を問わず、子供の亜人間が好まれる。現在二十歳のゼクスでは既に育ちきってしまって、ペットとしての需要が低いのが現状だ。その上顔に傷があっては、貰い手などつくはずもない。闇市に行く前から結果は見えていた。  俺を欲しがってくれる人なんて、きっといないんだろうな……。 「おわっ……!?」  不意に、ガクンと荷台が停止した。それでゼクスは現実に引き戻された。

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