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第4話*

 数匹のガルーを倒したところで、少しだけ攻撃が止んだ。  次の瞬間、群れの奥からボスと思しき巨大なガルーが姿を現した。  ボス級のガルーはヒグマよりも身体が大きく、強靱な後ろ足で立ち上がることもできる。咆哮を上げる大口は、一口でゼクスの全身丸呑みできそうだった。 (こ、こんなヤツがいたのか……!?)  少なくとも、自分の背丈の二倍はある。それだけで圧倒されてしまい、ゼクスは猟銃を構えることも忘れた。 「ガァァァ!」  ボスが咆哮を上げてゼクスに襲い掛かってくる。  ボスの牙が頭上に迫ってきた瞬間、突然ボスが仰け反って悲鳴を上げた。ハッと顔を上げたら、ボスの片目に透明な氷が突き刺さっていた。目が潰れ、濁った血液が吹き出ている。  呆気に取られているのも束の間、黒いローブを着た男性がサッと走り寄ってきて、ゼクスの腕を掴んだ。 「早く逃げなさい!」 「えっ? あなたは……」 「いいから、早く!」  背中を押され、ゼクスはガルーの群れの外に出された。  男性は分厚い本を片手に、指先から光の弾を次々発射していった。光の弾はガルー達の目をくらまし、戦意を喪失させていく。 (すごい……!)  あれが「魔法使い」というヤツか。話には聞いていたけれど、実際に目撃したのは初めてだ。武器らしい武器はなく、本当に本一冊でガルーの大群と戦っている。  ゼクスは逃げるのも忘れて彼を凝視した。単純に、その姿がかっこいいと思った。そして嬉しかった。あの人は俺のこと、見捨てずに助けてくれたんだ……。  その時、ボスの咆哮が大地を揺るがした。  片目を潰されたボスは逆上し、その男性に向かって大口を開けた。 「あっ、危な……!」  猟銃で援護しようと思ったが一瞬遅く、男性はあっけなくボスに丸呑みされてしまった。悲鳴すら聞こえなかった。彼が立っていた場所には、忘れ物のように厚手の本が落ちていた。 「く……っ! この……」  丸呑みされた直後なら、まだ間に合うかもしれない。  ゼクスが猟銃を構え直した、その時だった。

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