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第5話*

「グッ!?」  突然ボスが短く呻いた。開いていた口から涎混じりの血液が迸り、全身を細かく痙攣させている。見れば、腹部を突き破って枝のようなものが飛び出していた。  枝が白く発光した。ボスの腹が一気にぶわっと膨れ上がった。次の瞬間、パァンと小気味いい音を立てて腹が破裂した。内部から爆発するみたいに胴体が吹き飛び、周辺に血液と臓物を撒き散らす。 「キャィィン……!」  それを見たガルー達はすっかり怯えて、散り散りに逃走していった。  後に残ったのは、ガルーに食い尽くされた仲間たちと、腹を破裂させたボスの死骸だけだった。 「……!?」  破裂した腹部の中から、むくりと起き上がるものがあった。臓物まみれになり、全身が血と体液に汚れていたが、それは確かに人の形をしていた。 「あっ……!」  直感でわかった。あれはさっきの男性だ。ゼクスを助けてくれた、あの人だ。まだ生きていた! 「だ、だ、大丈夫ですかっ!?」  ゼクスは急いで男性の元に駆け寄った。  男性は臓物の中にうずくまったまま、苦しげに呻いていた。  強烈な胃酸にやられたのか、皮膚がひどく爛れている。肌色の表皮組織はほとんど溶け、生々しい真皮組織が剥き出しになっていた。見るからに痛そうな状態だった。  男性の身体がぐらりと傾いた。ゼクスは慌てて彼を抱き留め、臓物の中から引っ張り出した。ボスの胃酸が思った以上に強烈で、彼に触っただけで肌がピリピリしてきた。  男性は気絶しており、ピクリとも動かない。一刻も早く病院に行かなければと、彼を背負おうとした時。 「あれ……?」  爛れていたはずの指先がじわじわと元に戻っていくのが見えた。痛々しかった身体は徐々に皮膚で塞がれていき、元の綺麗な身体に戻っていく。荒っぽかった呼吸も、徐々に穏やかなものになっていった。 (この人は……)  かなり迷ったが、結局ゼクスは山を下りるのをやめた。じっと耳をすませたら、遠くから川のせせらぎが聞こえてきた。  なるべく刺激を与えないよう男性を背負い、ゼクスは山道を歩いていった。

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